なぜ「ツール」を活用するのか?
これまでの連載では、富士通のデジタルセールス組織の立ち上げについて時系列に沿ってお伝えしてきました。今回は番外編的にデジタルセールスを立ち上げ、成長させていく中で、どのようにツールや外部ベンダーを活用してきたかをご紹介します。
そもそも富士通に限らず、日本の大手企業の営業には「足で稼ぐ」根性のイメージが強いですよね。従来の営業との差を見せるためにも、あらゆるデジタルツールを使いこなすチームでありたいという構想が当初からあり、早い段階でツールへの投資を行いました。
たとえば顧客情報はウェブサイトで調べることもできますが、その時間を短縮するための武器としてSPEEDAやFORCASといった外部の情報サービスを当初より活用しています。顧客情報の管理・集約にはSalesforceやSansanを活用し、LinkedInを使って顧客とつながることもあります。IP電話ツールによるログの分析・解析も行い、オンボーディングにも活かしています。
このようにツールを積極的に使いこなすことが「デジタルセールスはどんな価値を発揮する組織なのか?」と問われた際にも役立ちました。たとえば先述のツール群を駆使してスピーディーに詳細なターゲットリストを生成することで、「これまでの支援チームとは違うな」と営業部に振り向いてもらえたのです。
既存顧客との付き合いが長い営業ほど、「外部から情報をもらわなくても自分がいちばんお客様を理解している」という意識が強いです。「目に見えていることがすべて」だった営業部に対し、「ほかの会社はすでにんなツールを使って営業活動していますよ」「富士通でもうまく使っていかないと負けてしまいますよ」という刺激を与えられた気がします。会社全体としては新規開拓の必要にも迫られていて、効果的にツールを活用するデジタルセールスチームならうまくいくかもしれない、と期待を高める効果もあったと思います。
実際にお客様訪問に同行した際、営業部長から次のようなコメントもらったこともあります。
「紹介ビジネスだけでは新規の売上はついてこない。知らない部門に自らアプローチし、案件をつくっていくときにデジタルの活用は不可欠。デジタルを活用してその情報が資産になるループが回ると会社もより健全になっていく」
「一方で、自分自身は古い人間で自ら変わっていくのはとても難しいが、率先して変わっていってくれる部署があることが有難い」
便利なものをきちんと使って生産性を高めることが、ひいては会社全体のカルチャー変革にもつながっていくはずだという言葉をもらえたのはとてもうれしかったですね。