自社らしいカスタマーサクセスを探る社内コミュニティ
高橋(才流) 日立製作所さんにはグループ全体を巻き込んだカスタマーサクセスの社内コミュニティがあるとうかがっています。その立ち上げを担った堀さんから自己紹介を含め、コミュニティ立ち上げの経緯をお話しいただけますか。
堀(日立製作所) 2004年に入社してから、約10年間ITプラットフォーム製品のプロモーションをしていました。その後、新規事業開発部門へ異動になり、2019年からカスタマーサクセスの取り組みを始めています。当初は数人のカスタマーサクセス推進チームが組成されたんです。ただ社内にはまだノウハウがなかったため、積極的に社外で情報を収集し、カスタマーサクセスの重要性を肌で感じました。2021年にはカスタマーサクセスを推進する社内コミュニティ「Success Lounge」を立ち上げるに至りました。現在は金融事業部へ異動になり、顧客起点の事業創生プロセスを習得・活用するための施策「FIBU Incubation Lab」の企画・運営のリーダーを務めていますが、有志的な活動としてコミュニティに携わり続けています。
高橋 カスタマーサクセス推進の取り組みを始める段階で、どのようなことから着手したのですか。
堀 2019年当初は、ベンチマークを探すことから始めました。幸いリクルートやSansanといった先進企業にインタビューする機会をいただいて。各社の取り組みを学んで整理したり、外部のイベントに参加して有識者とのネットワークを広げたりしていました。
2020年からは、外部から集めた知見を踏まえて自社でできることを探っていました。SaaS企業のカスタマーサクセスにおいては、お客様の業務プロセスを理解し、そのプロセスの中にSaaSを組み込むことが重要ですよね。これを我々日立グループでどうやったらできるのか考えた際、もともと業務プロセスを整理するためのソリューションを持っていたので、これをカスタマーサクセスの業務プロセスの構造化にも適用できるのではないかと考えたのです。 外部企業の協力を受け、試してみるとプロセスが整理・構造化され、効果が確認できました。
満を持してカスタマーサクセスに興味のある社内の事業部で実践したところ、顧客へのサービス提供がスムーズに進むだけでなく、各顧客の状況理解が進むといった効果をあげることができました。この実績をもって社内でカスタマーサクセスの勉強会イベントを開催したのが、2020年10月。これがコミュニティの前身でした。最初のイベントに参加した方のアンケートの中には、いくつか案件の相談があり、そこからカスタマーサクセスの実践に進んだケースもありました。
高橋 社内向けコミュニティが正式に立ち上がったのはどのタイミングだったのですか?
堀 2021年にオンラインの学びの拠点を立ち上げています。そのほかにも、私が個別に案件の相談を受けたり、教育コンテンツを制作したりといった活動に広がっていきました。
高橋 小さな推進チームで始まった取り組みが、形を変えてコミュニティとして結実したのですね。そもそも、なぜ日立グループでカスタマーサクセスが重要視されるようになったのですか。
堀 当社もモノ売りだけでなくサービス事業に取り組み始めており、概念としてのカスタマーサクセスが必要になってきたのです。ただし手法としては、世の中にある既存のカスタマーサクセスのやり方が、日立の事業に合わない場合も多い。それはまさに実践しながら痛感しているところです。だからこそ、全社であらゆる事業部にトップダウン的にカスタマーサクセスを押しつけるのは逆効果。興味がある人や悩みを抱えている人が相談しに来るコミュニティの形式も選択肢として用意することが、現状では最適なのかなと思います。