RaySheetの導入で、部門ごとの独自管理・データ入力の手間を解消
──法人営業の業務基盤としてSalesforceを活用していたものの、現場からの改善要望をきっかけにRaySheetを導入されたとうかがいました。RaySheet導入前はどのような課題が生じていたのでしょうか。
梅﨑 もともと、予実管理や休眠顧客の発掘、適切なタイミングでの顧客アプローチなど、営業活動データの利活用を推し進める役割を期待してSalesforceを導入しました。それらを叶えるためには「データの蓄積」がとても重要ですよね。ヤフーでは10年以上Salesforceを利用していて業務プロセスもかなり洗練されていた一方、部門ごとの独自管理や、1件ずつデータを入力する手間が生じていることが課題でした。これらを解決するため、とくに一括登録機能に重点を置いてツールを選定し、RaySheetを導入したのです。
──データ入力の効率化や一元管理を叶えるツールとしてRaySheetを選ばれましたが、何が選定の決め手となったのでしょうか。
梅﨑 やはりSalesforceとの高い親和性です。RaySheet導入前は、Salesforceからデータを抜き出してExcelで加工し、再びSalesforceに登録するという手間が生じていました。RaySheetを使うことでSalesforce上で登録や一括更新が可能になり、Excelの独自管理や手間を軽減できる点に魅力を感じたのです。また、ほかの候補にはなかった機能として、Excelの関数を使えるのもポイントでしたね。普段から使い慣れているExcelに近い使用感なら、営業現場への導入がスムーズに進みそうだと考えました。
必要な情報のみ抽出し、ページ遷移せずに一覧が可能
──次に、各部門におけるRaySheetの構成および運用方法をうかがいたいと思います。まずは広告部門のRaySheet運用を担当されている石栗さん、お聞かせいただけますか。
石栗 そもそも広告部門でRaySheetを導入したのは、SalesforceのUIを営業が使い慣れているExcelのようにして、入力工数を減らすためでした。そのため、まずはSalesforceの基本機能であるリストビューやレポートをRaySheetビュー化することからスタートしたのです。そのうち開発のナレッジやノウハウが蓄積されたことで、現場の要望を聞きながら独自機能の実装にも着手しました。
石栗 とくに効果を発揮したのは、企業情報の集約です。広告部門の営業が担当する企業は多岐にわたり、管理する情報量も膨大です。それらをページを遷移せずに一覧で見ることや、一括更新ができるビューを作成しました。同一の画面で表示させることが難しかった「取引先」「商談」「活動」などの情報をRaySheetのビューで表示させ、ページ遷移することなく、かつ必要なデータだけを表示できるのは大きなポイントですね。
石栗 これらのビューはまず管理者が作成し、そのあと一部の営業に開発権限を与えるという運用をしています。独自の変更が行われた場合にも、広告部門全体の運用はおおむね把握できるようになっていますね。
グラフと組み合わせ、週の活動内容をひと目で把握
──石栗さん、ありがとうございました。では次に、Yahoo!ショッピング部門ではどのようにRaySheetを活用しているのでしょうか。
多田 ショッピング部門では、RaySheetを単体で使うケースと、パーツとして使うケースがあります。RaySheet単体で使うのは、担当営業の一括変更や数十件程度のデータを一括で修正したいとき。最新データを用意してインポートする手間がなく、コピペでぱぱっと済ませられるのは便利ですね。
多田 一方、時にはRaySheet単体では表現できない要望を営業からもらうこともあります。たとえば「報告の際、数値をすぐ確認できるようにグラフとRaySheetのテーブルを組み合わせてほしい」と言われたときは、Salesforceをカスタマイズしてグラフを作成し、その下にRaySheetを差し込みました。毎週行う面談で営業担当者が上長と会話しながら提案予定金額や件数などを入力すると、それらの数値がグラフでも可視化され、週の活動内容がひと目でわかるようになっています。Excelやスプレッドシートでこのような連携をして一括入力できるようにするのは、なかなか難しいと思いますね。
多田 これらのシステム開発は私が担当する一方、日々の運用面では、Yahoo!ショッピングの営業を取りまとめている営業推進本部へRaySheetの基本的な使い方を教えました。列の追加や表示形式などの標準的な設定はすべて覚えてもらったので、現在は私が手をかけなくても、営業自らが日々しっかりと使いこなしてくれています。
データ入力時間を月310時間→月65時間まで削減
──成果についてはいかがでしょうか。
多田 営業計画や実績管理のために「レコードを一括更新したい」というニーズが強く、それをゼロから開発すると非常に大変なのですが、RaySheetを使用することでリッチなUIをかんたんに実装できました。ExcelライクなUIのおかげで、開発したものを容易に理解してもらえる利点もありましたね。
また営業がExcelで独自管理していたころは、上層部が最新の状況を把握しづらいという問題がありました。しかしRaySheet導入後は、営業はこれまでどおりの方法を継続でき、上層部はSalesforceに蓄積されるデータからリアルタイムで計画や予定を確認できるようになりました。まさに、SalesforceとRaySheetを組み合わせることで実現できた成果だと思います。
石栗 広告部門ではRaySheetの実装に対する反響が大きく、運用や成果を部内で共有する機会を設けました。その際、営業担当52名を対象に、売上見込みのデータ入力に費やす時間を調べたのです。すると、RaySheet導入前は月に合計310時間を費やしていたのが、導入後は65時間に減少したことがわかりました。月245時間、ひとり当たりで月におよそ5時間を削減したのです。
定性的な成果としては、アンケート調査で「RaySheetによりデータ入力が簡略化されたか」とたずねたところ、全回答者が「簡略化された」と回答しました。必要なデータが集約されたことで、業務に用いるメインページとしてRaySheetを頻繁に利用している人数も増加しています。
梅﨑 RaySheetのワーク列を活用すれば、Salesforce上のデータに影響を与えず「部門独自のカラムを追加したい」という個別の要望に応えられます。部門最適を叶えつつ、フォーマットの点在・ブラックボックス化を防げるというのは、データの利活用を全社的に推し進めるうえで大きなメリットですね。
──今後、SalesforceとRaySheetをどのように活用したいと考えていらっしゃいますか。RaySheetへ対する期待も含めて教えてください。
多田 RaySheetを入力UIとして活用し、Salesforceのレポートで数値の分析や集計を行うという使い方は今後も継続していきたいと考えています。将来的にはSalesforceのレポートやダッシュボードとRaySheetをもっと統合したいと思っているため、RaySheetでダッシュボードをつくれるようになれば便利ですね。
また、RaySheetで入力されたデータの中には、Salesforce標準のレポート機能で適切に表現できないものがあります。そのようなデータはRaySheetからExcel形式でダウンロードし、手元のExcelで集計や加工を行ったうえで各営業にメールで配信していますが、それもRaySheet上でできるようになったら嬉しいです。
石栗 入力UIとしてはもちろんのこと、表示用UIとしても着実にユーザーの要望を形にできると感じています。一方で、利用するビューがかなり増えており、社内の利用ルールやフォルダの共有範囲がまだまだ最適化されていないと感じています。サブフォルダやアップデートされている機能を使いながら、より使いやすく最適化していきたいですね。新機能やアップデートを紹介するニュースレターもしっかりチェックしているので、今後も楽しみにしています。
梅﨑 弊社ではセキュリティを担保するために、部署や雇用形態などの区分に基づいて多数の公開グループを作成しています。合併にともない組織がさらに大きくなったため、アクセス数の上限拡張など、大規模な組織にも今後さらに柔軟に対応していただけると、非常に助かります。
部門に寄り添う管理者と大局的な視点を持つ管理者 両方の存在が重要
──最後に、SalesforceとRaySheetを組み合わせた活用を推進するリーダーとして、全社導入や部門最適化に取り組む各社の管理者の皆さまにアドバイスをお願いします。
梅﨑 全社的に複数部門で導入を進める際は各部門に寄り添うシステム管理者が必要ですが、同時に、大局的な視点を持った管理者の存在も非常に重要だと考えています。利用ルールや開発ルールの設定、利用ライセンス数の把握など全体的な視点があることによって、新たに使用を希望する部門が現れた際も、既存のルールを元にしてスムーズに導入を進めることが可能になると感じています。
多田 関係者の巻き込み方も重要です。現場からはどうしても「今までExcelでできていたんだからExcelでやりたい」という声は上がると思いますが、そこでしっかりとRaySheetの利点を伝え、「RaySheetでやるんだ」という熱意を持って導入を推進するキーパーソンが現場に近いところにいるのが重要だと思っています。
石栗 利用拡大のステップとしては、シンプルに始めて段階的に進めるのが良いと思います。業務の悩みや要望をヒアリングし、それを段階的に実装していくことが、実装の定着や拡大の鍵になるのではないでしょうか。
──本日はありがとうございました!