世界で淘汰されないために、日本の大企業はDXに挑む
田口(ユーザベース) モデレーターを務めますユーザーベース FORCAS事業の田口と申します。営業DXを加速させるプラットフォームの提供者の視点から、今日は富士通の友廣さん、NTT東日本の蛭間さんにインタビューを行い、大きな組織におけるDX推進についてうかがっていきます。では、自己紹介をお願いします。
友廣(富士通) 富士通の友廣と申します。これまでは外資系企業のBtoBマーケティングを主戦場にしておりましたが、縁があって富士通に入社して1年半ほどです。日本に生まれたので、キャリアの最後は日本企業で終えたい、何より日本企業を元気にしたいという思いを持っています。
蛭間(NTT東日本) NTT東日本の蛭間と申します。私は東京エリアを管轄する法人営業部長を務めています。NTT東日本と聞くと、電話や通信のイメージがかなり強いと思うのですが、ここ近年はSIも含めたICTサービスや保守サポートを強化し、現在はドローンや農業、スマートストアやeSportsまで、グループ会社も含め事業を拡大しています。いちばん新しい会社はNTTDXパートナーで、こちらはDXコンサルの専門会社です。かなりビジネス領域が広がっているという背景をお伝えさせておいてください。
田口 ありがとうございます。今回のテーマは「大規模組織のDX」ですが、ここ5年ほどの間でさまざまな企業が営業やマーケティング組織におけるDXに取り組む例が増えてきているように思います。そもそも、なぜこのタイミングでDXに取り組もうとする大企業が増えてきているのか。富士通が営業DXに取り組み始めた背景からうかがえますか。
友廣 大きな話になりますが、おそらく大半の日本の大企業で事業転換が求められていると思います。実際に富士通も、ハードウェアからソフトウェアのビジネスへと転換を進めています。なぜ事業転換が求められているかと言うと、既存顧客に既存ソリューション・サービスを売るだけでは企業が成長しない時代に来ているからです。日本の時価総額上位を占めるのは製造業ばかりですが、良いところで何十兆円。欧米諸国に目を向けるとGAFAやMicrosoftなどの時価総額上位企業が提供するのは、ソフトウェアだけではなく、サービスからエンタテイメントまで幅広いです。富士通とMicrosoftの従業員数は共に十数万人程度ですが、時価総額は100倍ほどの差があるわけです。
ではなぜ日本は製造業が強く、サービスが弱いのか。これまでの日本企業は、1つひとつ丁寧に正確なものを緻密につくって輸出するビジネスが得意だったと思うのですが、いまビジネスの主流はソフトウェアやプラットフォームに移行しつつあります。先に挙げたような欧米企業が得意なのは、ひとつの精巧なマスターからコピーをつくり、全世界に拡げていくということ。もしくは、すごいプラットフォームがひとつあって、そこにみんなが集まって、いろいろなコンテンツを載せ、さらに大きなプラットフォームにしていくようなビジネスですね。
ヒト(工数)を売るビジネスやハードウェアビジネスはどうしても利益率が下がるし、ヒトは疲れ、ハードウェアは老朽化してしまう。しかし、コピーされたソフトウェアは疲れないし、高付加価値で利益率も高いのです。この転換が求められていますし、利益率や企業価値を高めなければ、日本の大企業は世界で淘汰されてしまう。だからこそ今DXが求められているんですね。ビジネスが変わるのであれば、人事・評価システムはもちろん、セリングプロセスもマーケティングのやり方も変えなくてはならないんです。