データ蓄積をチャットボットで自動化
質問2「これからの時代、営業活動におけるデータやAI活用の可能性は?」――製造業 経営層(50代)
この問いに対しては、徳田氏からNTTコミュニケーションズで現在進行中の取り組みが紹介された。大きくはふたつ、「データのインプット」と「拡張分析の実践」である。
まず「データのインプット」では、データの蓄積を目的に「入力支援」を行っている。たとえば、チャットボットやOutlookのスケジュールメールをそのままSFAに取り込むことで、自動的にデータが蓄積されるというわけだ。加えて、既存の営業ノウハウをSFAに実装したり、ハイパフォーマーのインタビュー結果を反映したりすることで、実践的なノウハウを用いた「ネクストアクション」の提示につなげることを目指している。
入力支援の具体例として、「チャットボットによる活動投入」が紹介された。たとえば、「@おつかれ」と入力すると、当日の営業について記録する選択肢が表示され、ラジオボタンで選んでいくと自然に営業報告がなされるようになっている。
マネージャーを経ず、ネクストアクションを自動配信
「拡張分析の実践」では、収集したデータを分析し、それらを経営指標とするための可視化に加えて、現場の営業に“気づき”を与えるデータ抽出を実践している。たとえば、顧客の経営状況や取引状況に加え、競合他社との比較や顧客とのリレーションマップ、サービスのどの部分が利用されているかという「ITシェアマップ」などが提供されることで、営業担当者は「次に何を提案するか」という行動に活かすことができている。加えて、個々人にマッチしたネクストアクションの自動配信も進み始めているという。
具体的にはSFAやMAなどでの顧客の状況や外部情報を取得し、一定の条件や閾値を超えると、営業担当者の携帯端末にとるべきネクストアクションを示唆するメッセージが自動で届くという仕組みで、現在約1,000名が実証にあたっている。具体的には、ある顧客のサービスの利用率が80%を超えたとしたら、「こういう提案をしよう」とヒントが届いたり、AIの予測モデルで顧客が興味を持っていそうなものを予測したり、似ているパイプラインをつくっている人を抽出し、「アドバイスを聞いてみたら?」と提案したり――これらの示唆がマネージャーを経由せずとも自動的かつ、個別に配信されるというもの。なお同社では、失注率の予測や影響する要素の可視化にも取り組んでいる。
高橋氏は「マネージャーの大半は、あとから『あれどうなっているの』とか、すでに報告書に記載されているものを確認したり、指示も手遅れ気味だったりする。それがタイムリーに来るだけで、チームの中で不毛な会話も減るのではないか」と現場での価値を評する。徳田氏も「データを見るのが後手に回っているところを、早い段階で気づきアクションにつなげられる。そんなデータ流通を意識した」と語った。
メンバーがデータを入力しても、マネージャーが上手く使いこなせないために、だんだんと入力されなくなるという企業も多い。データ分析の結果が自動的に届くとなれば、現場も入力の恩恵を感じるだろう。なお、実証対象者のアンケートによると8〜9割が「ネクストアクションの自動配信」について「役に立つ」と回答しているという。