営業経験者が販促側に回って感じた「もやもや」
――堀場エステックさまの事業について教えてください。
志知 京都に本社を置く堀場製作所のグループ会社です。グループが展開する「環境」「医療」「化学」「自動車」「半導体」という5つの事業のうち、当社は半導体事業に属しています。半導体の製造装置に搭載される流量計測制御機器「マスフローコントローラー」が主力製品で、そのほかにはガス分析のモニターなど計測・制御、分析機器の製造・販売をしています。
――現在、営業推進部に所属されていらっしゃいますね。おふたりの現職に至るまでのキャリアを教えてください。
志知 新卒で当社に入社し、ずっと営業畑です。営業の中では珍しくいろいろな業務を経験しました。海外営業や国内の外勤営業を経験したのち、産休・育休を経て、現在は営業推進部に所属しています。育休から復帰後、最初は外勤営業に戻ったのですが、時間的な制約によってお客様の担当を受け持つことが難しかったという理由もあり、当時できたばかりだった営業推進部を自ら志望しました。自分の経験を活かして営業のバックアップができるのではないかと考えたのです。営業推進部では、デジタルマーケティングを営業の課題解決手段にするべく、ツール導入や新しい仕組みをつくることを主業務としています。
東 2016年に新卒で入社し、2年間国内の外勤営業を担当しました。半導体以外のお客様も担当し、代理店さんへのフォローも行っていました。営業推進部より、お客様へのアプロ―チに営業の考え方をとりいれたいと声をかけてもらい、デジタルマーケティングの業務にも携わっていました。2019年からインサイドセールスを担当しています。
――デジタルマーケティングを営業の課題解決の手段に、ということでしたがもともとどのような課題を感じていたのでしょうか。
志知 いざ販促側に回ってから、「もやもや」を抱えるようになりました。BtoBの営業・マーケティングではあるあるだと思いますが、展示会を実施後のお客様フォローで営業連携に課題を感じたのです。最初は、マーケティング施策そのものに改善点があると思い、企画段階から営業に関わってもらったり、会期中のお客様対応の見直しを行ったりするなどして、どうすれば売上につながるかを考えたのですが、一向に数値は改善されませんでした。営業経験者だった私自身が数字に執着心があり、自分が行っている施策がきちんと数字につながっていないことに不完全燃焼感があったんです。
当社では2013年ごろにSFAを導入したのですが、2015年に参加したSFAのユーザー会でMAについて知る機会がありました。MAについて調べるうちに「確度の高い顧客」を営業にフォローしてもらう必要があり、それを見極めるためにMAツールが有効なのではないかと思い至りました。
――営業との連携課題を解決するのに、MAが有効だと思われたのですね。ちなみに、2013年のSFA導入も営業推進部が進めたのでしょうか。
志知 これもよくあることだと思いますが、営業時代、先輩からの引き継ぎは「名刺の束を渡されるだけ」でした。情報の蓄積がなく、お客様に対して「前任者からもうかがっていると思うのですが、現在担当されている研究を教えてもらえますか」というコミュニケーションをとることになるのを申し訳なく思っていました。営業推進部に異動し、国内のとあるSFAベンダーの営業担当者の方が、当社との過去商談や接点履歴をもとに提案をしてくれたときに「こういうツールが当社にも必要だ」と感じました。いくつかのSFAを検討し、当社ではSalesforceを活用することになりました。
それまでは日報などもすべてExcelで管理していたため、上申する際にもExcelから情報を切り貼りする必要があるなどアウトプットに課題がありました。また、組織横断で情報を閲覧することも難しかったです。営業担当者が得るあらゆる情報は会社の資産になりますから、これを誰でも同じように閲覧できる状態をつくっていこうと考えました。
――営業組織からすると、これまでの営業プロセスに新たなテクノロジーが追加されていく事になったと思います。取り組みの中で気をつけていることはありますか。
志知 とにかく営業連携を重視しています。MAを導入すると決めたとき、営業経験やお客様理解が前提にないと絶対に成功しないと感じました。MA活用ではお客様の温度感を高め、最適なタイミングでフォローするという基本に加え、ゴールに至るまでのあらゆるセールスプロセスを分解してマネジメントすることが重要だと感じたからです。そこで、私は「シンプルに理解できる言葉や指標」を用いて営業と会話をすることを大事にしていました。
たとえば、「MQL」とかは使わない(笑)。メールの開封率やコンバージョンレート、アクセスレートもマーケティング施策を担当する人間には必要な指標ですが、営業にとって大事なのは商談数や、その後の受注率です。営業側も肌感覚でそのパーセンテージは理解していますから、そのうえでインサイドセールスがフォローするとどれくらい商談化率が変化するのかを伝えるなどお互いが理解できる内容で会話することを重視しました。