営業からの改革に必要なのはあらゆるフィードバックを取りこぼさないこと
――現職に至るまでのキャリアをお聞かせください。
東京都の半分を占めるエリアの製造業の生産管理システムの導入から始まって、国内外のERPシステムベンダーを転々とする中でカントリーマネージャーや社長などさまざまな立場を経験しましたが、どの会社にいても役割は基本的に営業職です。日本マイクロソフトでは、企業のビジネスを支えるビジネスアプリケーションを販売する営業部隊のリーダーを務めています。
――デジタルを活用した"営業改革"はホットトピックで、デジタルトランスフォーメーションという言葉でも表現されています。人によっては解釈が異なりがちなこの言葉を、田村さんはどう定義されていますか。
「デジタルをツールとして利用し、変わろうとすること」としてのデジタルトランスフォーメーションなら、営業は昔から近いことをやっているんですよ。電子◯◯とか、分厚いシステム手帳とか、営業はそういうガジェットが好きですよね。
当時は自分の情報を整理し仕事で活用するために、今でいうデジタル“的なもの”を使って仕事を変えようとしていたわけです。それって、ミニマルではあるもののトランスフォーメーションだと言えませんか。
今は、お客様のモノの買い方や選び方がどんどん変わってきているし、選択肢も溢れている。当然のことながらお客様側もデジタルを使っているので、いかにそれを利用しながらお客様に寄り添う形で自分たちの営業スタイルを変えていくかということを、営業の方々は考えていると思います。その次元は、営業個人のツールや生産性という枠組みを完全に超えています。傍目から見ると、その様子をデジタルトランスフォーメーションと呼ぶのかもしれません。
ですから、営業の方々にとって、デジタルトランスフォーメーションは馴染みのあるコンセプトだと思います。ただこれからは、個人を超え、法人としてどう取り組んでいくべきか考えなければならない。仕掛けの規模が大きくなっていくわけです。
――その変化に気づくべきは、やはり営業部門のマネージャー層なのでしょうか。
最前線にいる営業が気づくこともあれば、お客様からフィードバックを受けるカスタマーサポートやモノづくりの製造現場が気づきのタネを生むこともあると思います。経理部門から届く数字やSNSの投稿がヒントになった事例もあります。
営業の仕組みをトランスフォームさせるためのヒントは身の回りにたくさんありますが、どこにあるかはわからない。裏を返せば、どこからでもフィードバックが得られるように自分たちのアンテナを張り巡らせているかどうかが、その先の勝敗や優劣を分けると思います。