お客様はサービスのプロではない
生命保険の営業マンとお会いしたときのこと。マナーもしっかりしており、良い雰囲気の方だった。お会いして20分程度、商品についていろいろな話を聞いたのだが、内容が少し難しい。聞けば聞くほど「どこの保険も同じなのでは」という印象を持った。
生命保険は各社工夫して差別化を図っている。厳密に言えばいろいろな差があるのだろう。しかし私にはどうしても似たり寄ったりに思えてしまう。結局、この方から保険には入らなかった。
あなたも商品を検討する際、「こちらの商品はこんな機能がありまして、さらに……」と説明され、わけがわからなくなった経験があるだろう。こういうときは決断できずに買わずに帰ってくるものだ。
お客様はプロではないし、普段からその商品のことばかり考えるわけでもない。少しでも話がわからなくなった時点で興味を失う。話を聞いたとしても、最後は「よくわからないけど、まあどこも同じなんだろう」と判断してしまう。販売サイドとしてはこうならないように注意しなくてはならない。
トップ営業マンはこのようなミスをしない。お客様が理解できない説明は絶対にしないし、あれもこれもと説明することもしない。メリットや利点をひとつだけに絞り「この部分に関しては他社と大きく違います」と違いを明確に示す。だから伝わりやすい。こうしてお客様の心をつかんでいる。
ダメ営業マン時代のこと。ハウスメーカーで営業をしていた私は、建物の耐久性について熱心に説明していたものだ。後輩にお客様役をしてもらい、なんどもロープレもした。十八番(オハコ)は「震度7の地震でもびくともしない構造」についての説明。これについては資料を使い、軽やかに話せたものだ。
しかし、このトークは響かなかった。途中であからさまに”興味がない”と示してくるお客様もいた。ただお客様の反応をあまり気にしていなかった。当時の私は「しっかりと利点をアピールできれば良い」と思っていたからだ。これも反省すべき点である。
あるとき、いつものように「当社の建物は震度7の地震でも1棟も倒れていません」と堂々と説明したところ、お客様が「どの会社の営業マンも”当社の建物は倒れていない”と言ってきますが、いったいどこの建物が倒れたのですか?」と反論してきた。
私が扱っていた鉄骨の住宅はもちろん、木造の会社でも同じような説明をしている。聞いている方は「また耐震性の話かぁ。うんざりだ」と思っているのだ。これではいくら熱を入れて伝えても意味がない。