日本における従来方式の育成が抱える問題点
日本における社員育成の課題について、山下氏は「新入社員や階層別研修などを人事部門がやっていることが多い。外部もサポートを行うが自社主導で、実際にはOJTが中心の場合がほとんど。育成投資はひとりあたり3~5万で、時間は年間10時間以下。また、効果検証は具体的ではなく、アンケートやテストが一般的で、分析まではできていない」と分析する。
とくに、実際にトレーニングを実施した場合にも、実際の業務に生かせないことや、OJTゆえに具体的な効果検証ができない点なども、課題として挙げられた。セールス・イネーブルメントのポイントはその「効果検証」であり、そのサイクルを設計するのが重要だという。
「たとえば、新規領域の売上が必要なのか、案件数が必要なのか、既存領域で維持拡大できたのか、そこを定める必要があります。それによって期待行動が変わってくる。そのためには知識やスキルが必要になり、そこを連動させるのがイネーブルメントの最初の発想として非常に重要になります。その定義さえできれば、営業が知識を習得できたのか、結果的にKPIが変わったのかなどをチェックすることができるようになり、PDCAサイクルが回り始めます」(山下氏)
なお、このサイクルがうまく回らない場合、原因はトレーニングの内容だけとは限らない。山下氏は、ミクロ視点とマクロ視点の両方が重要だと強調した。具体的に、ミクロの視点としては、「何を成果とするのかを定量・定性的に求められるか」「現場で役立つ内容なのか」「マネージャーが内容を把握しているか」などがカギになる。一方、マクロ視点では、「営業や企画、人事など部門間の連携ができているのか」どうかが課題となる。
具体的には、営業プロセスの再構築や、ツールの整備、マネージャーのコーチングなどをまとめて実行する必要がある。そのうえで、重要になるのは人事や営業推進やマーケティングなどのノウハウを必要に応じて、共有することだという。
なお、社員に新しいスキルを習得させるためには、学習と実践が欠かせない。この実践に関しては、「コーチング」が有効なアプローチになり、習得スピードに影響する、と同氏は述べる。また、要領よく動ける人材には、成績に応じてツールやナレッジによってサポートするのが効率的だという。