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SalesZine Day(セールスジン・デイ)とは、テクノロジーで営業組織を支援するウェブマガジン「SalesZine」が主催するイベントです。 丸1日を通してSales Techのトレンドや最新事例を効率的に短時間で網羅する機会としていただければ幸いです。

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企業の競争力を高める「営業DX」とは? 日本の営業組織の未来を探る powered by SalesZine

2024年4月18日(木)14:00~15:30

常に高い売上目標を達成し続けなければいけない営業組織。先行きの見通しが立たない時代においても成果を挙げるためには、過去の経験にとらわれず、柔軟に顧客や時代に合わせて変化し続けなければなりません。変化に必要なのは、継続的な学びであり、新たなテクノロジーや新たな営業の仕組みは営業組織の変化を助け、支えてくれるものであるはずです。SalesZine編集部が企画する講座を集めた「SalesZine Academy(セールスジン アカデミー)」は、新しい営業組織をつくり、けん引する人材を育てるお手伝いをします。

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SalesZine Day 2020 Winter(AD)

「Must have」な組織を目指せ!成果起点の育成手法セールス・イネーブルメント構築に必要な考え方

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 営業組織をより強くするための概念「セールス・イネーブルメント」への注目が高まっている。1月21日に開催された「SalesZine Day 2020 Winter」には、昨年12月『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』を上梓したR-Squaere & Companyの代表取締役社長の山下貴宏氏が登壇。セールス・イネーブルメントの体系的理解と構築の進め方を海外動向や実際の事例も交えながら共有した。

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海外で先行しているセールス・イネーブルメントのトレンド

 R-Squaere & Companyは昨年7月に立ち上がったスタートアップ。同社は、近年増加している「セールス・イネーブルメントチームを立ち上げたい」という企業に向けたコンサルティングサービスを提供しながら、よりデータに基づいたイネーブルメントを実現するためのシステムの提供も視野に入れその開発にも取り組んでいる。

 山下氏自身は、セールスフォース・ドットコムで、約7年半営業の生産性を上げるというテーマに取り組み、日本と韓国のイネーブルメントプログラムの統括をしてきた。

 「セールス・イネーブルメントという言葉を聞くことが増えてきていると思います。しかし、その実態は何なのか、どう取り組めば良いのか悩んでいる方も多いです。海外動向から事例に至るまでを多くの人に共有すべく、昨年末に書籍を出版しました。本日も書籍の内容も交えながら、体系的な理解と構築の方法をお話しできればと思っています」(山下氏)

 
株式会社R-Squere & Company 代表取締役社長 山下貴宏氏

 営業組織改革のトレンドとして注目される「セールス・イネーブルメント」を、営業に関連する取り組みを統合的に組み立て、成果を数値化して管理できるようにするもの、つまり「成果起点の営業人材開発」だと同氏は定義している。

 日本ではまだ馴染みの薄い概念かもしれないが、海外では5~7年先行してマーケットができあがっており、企業の6割がチームを立ち上げて組織的に取り組むようになってきているというデータも存在している。企業のイネーブルメントへの取り組みが加速するのに合わせ、専門人材の増加も顕著だ。たとえば、LinkedInにおける「Enablement Job」の推移を見ると、3年間で3倍以上に数が増えてきている。

 専門人材である「イネーブラー」を支える団体もまた増えてきている。いわゆる人材開発協会ATD(Association for Talent Development)のフレームワークでは営業の活動管理と同等に重要な概念として「SALES ENABLEMENT」が位置づけられる。さらには、営業に関する採用や報酬など、営業部隊のトレーニングだけではなく、関連部門までもがスコープに含められるようになってきている。

 

 世界各国からイネーブラーが集まる「Sales Enablement Society」では、支援の対象が直販営業以外も広がっている傾向が発表されている。パートナー営業もイネーブルメントの対象とすることがもはや一般的になりつつあるという。

 保守やカスタマーサービスなど販売後のサポートを対象とするものは、「カスタマーサクセス・イネーブルメント」と呼ばれ、顧客やパートナーを含む収益部門全体を対象にした「レベニュー・イネーブルメント」なども今後注目していくべき概念だと紹介された。

日本における従来方式の育成が抱える問題点

 日本における社員育成の課題について、山下氏は「新入社員や階層別研修などを人事部門がやっていることが多い。外部もサポートを行うが自社主導で、実際にはOJTが中心の場合がほとんど。育成投資はひとりあたり3~5万で、時間は年間10時間以下。また、効果検証は具体的ではなく、アンケートやテストが一般的で、分析まではできていない」と分析する。

 とくに、実際にトレーニングを実施した場合にも、実際の業務に生かせないことや、OJTゆえに具体的な効果検証ができない点なども、課題として挙げられた。セールス・イネーブルメントのポイントはその「効果検証」であり、そのサイクルを設計するのが重要だという。

 「たとえば、新規領域の売上が必要なのか、案件数が必要なのか、既存領域で維持拡大できたのか、そこを定める必要があります。それによって期待行動が変わってくる。そのためには知識やスキルが必要になり、そこを連動させるのがイネーブルメントの最初の発想として非常に重要になります。その定義さえできれば、営業が知識を習得できたのか、結果的にKPIが変わったのかなどをチェックすることができるようになり、PDCAサイクルが回り始めます」(山下氏)

 

 なお、このサイクルがうまく回らない場合、原因はトレーニングの内容だけとは限らない。山下氏は、ミクロ視点とマクロ視点の両方が重要だと強調した。具体的に、ミクロの視点としては、「何を成果とするのかを定量・定性的に求められるか」「現場で役立つ内容なのか」「マネージャーが内容を把握しているか」などがカギになる。一方、マクロ視点では、「営業や企画、人事など部門間の連携ができているのか」どうかが課題となる。

 

 具体的には、営業プロセスの再構築や、ツールの整備、マネージャーのコーチングなどをまとめて実行する必要がある。そのうえで、重要になるのは人事や営業推進やマーケティングなどのノウハウを必要に応じて、共有することだという。

 なお、社員に新しいスキルを習得させるためには、学習と実践が欠かせない。この実践に関しては、「コーチング」が有効なアプローチになり、習得スピードに影響する、と同氏は述べる。また、要領よく動ける人材には、成績に応じてツールやナレッジによってサポートするのが効率的だという。

育成テーマ・KPIをどう設定する?SFAを活用し、専任人材を

 大人数への育成が必要になる場合、コンテンツを活用したトレーニングも欠かせない。コンテンツの作成には、社内にあるナレッジを活用するのが良い、と山下氏は話す。ポイントは、テーマを特定したうえで、集約し、体系化してコンテンツ化することを意識することだ。ここはイネーブラーの腕の見せ所だという。

 さらにその「育成テーマ」は企業規模や状況となって異なると同氏は指摘する。たとえば、スタートアップならば売上のトップラインをスピーディーに高めるために採用している中途社員の立ち上げ(オンボーディング)をいかに早めるかがテーマになる。一方、大企業においては、ある程度営業向けの研修も用意されており型もできあがっている企業も多いが、新たにチャレンジする領域の事業拡大に向けた「営業スタイル変革」がテーマとしてよく挙げられるそうだ。

 

 続けて、同氏は書籍を引用し国内事例をふたつ紹介。SansanとNTTコミュニケーションズの事例だ。Sansanは急成長に合わせて増える社員のオンボーディングのためにイネーブルメントに取り組み始めた。最初に取り組んだことは、現状を可視化するためのSFAの整備だったという。営業のデータをとれる状態になって、初めてオンボーディングのプログラムに着手することができるのだ。

 NTTコミュニケーションズの場合は、商材の複雑化に際し営業をより「ソリューションセリング」できる営業へと変化させていくことが大きなテーマだった。加えて、育成プログラムへの理解を組織内で広めていく必要もあった。そこでまず、ハイパフォーマーのスキルを体系化し、勉強会形式で広げていくことから始めた。1年から1年半かけ、イネーブルメントのアプロ―チの重要性を伝え、現在イネーブルメントチームの規模は20名を超えるほどになっている。

 KPI設定もまた、重要なテーマだ。営業組織の規模で分けることを同氏は推奨している。具体的には、10人未満の場合には、イネーブルメントチームも営業と一緒に「達成率」や「成約率」を指標として追っていけば十分だという。一方、何百何千人もいるような組織においては、営業目標達成率の中央値を見て「マスの生産性」の観点にシフトしていくのがポイントだ。

 イネーブルメントが、旧来の育成と違うのはデータドリブンな点だという前提で、同氏はセールス・イネーブルメント実践のステップについて述べた。

 「まず、データはSFAから取得できるものです。育成の目的がデータで示せないと、説得力に欠けるため、SFAの整備に着手することが最初のステップです。次のフェーズはハードルとなる企業も多いところですが、兼任でもいいので、担当者をアサインすること。ここまでできれば、プログラムをつくって提供し、育成のデータを蓄積し、成果と突き合わせ検証することまでできる。最後はこの一連の取り組みを営業役員をはじめとした経営層とレビューしていきましょう。ここまでできれば、育成の成果検証サイクルを回していくことができる組織になっています」(山下氏)

 

 山下氏は、以下のようなメッセージで講演を締めくくった。

 「イネーブルメントにあるものは、成果起点で体系化された自社に合ったコンテンツの提供、そしてトレーニングのフォローが地続きで可視化されていることです。そうすることで、企業にとってなくてはならない『Must have』な育成プログラムとなります。単発のトレーニングや実践的でないもの、ITが活用されていないような育成は、良くて『Nice to have』あったらいい止まりです。ぜひ『Must have』を目指してセールス・イネーブルメントの導入を検討してほしいです」(山下氏)

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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