まずは「コアスキル」をひとつ決めることから
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宮田 ここからは読者からの質問に回答いただこうと思います。ひとつめは「売れる営業の型を決めるプログラムをどうつくるか」。組織立ち上げや改編時、さらには初めて売るものを売っていくときにどうやって売れるプロセスを生み出していくのかについてお聞かせください。
村尾 前提として営業はROI(投資利益率)が決まっているべきだと思っています。それに加えて、自社のカルチャーやビジョンをもとにセールス組織のミッションステートメントを決め、プロダクトに対してどういう販売オペレーションが組めるかどうかを考え、必要な人を明確にイメージし、営業が持っているべきコアスキルを定量・定性の両面から考えることではないでしょうか。
ただこの考えかたには訓練もいりますから、プログラム全体ではなくまずコアなスキルをひとつ決めることから始めても良いと思います。たとえば、freeeでやっていたことですが、アポをすぐとれる営業と時間がかかる営業がいるときに、ふたりのスキルを分類して見てみます。アポを早くとることに必要なスキルがわかれば、それを徹底的に組織で教えられるものか検証する。教えられるのであれば、どのような教材で誰がどんなふうに教えればよいかをドキュメントにする。ドキュメントにしたら1クォーター、時間とお金をかけて徹底的にトレーニングしてみる。それでできるようになれば、それがプログラムの一部となります。そうやって順次展開していく「順次展開型」がおすすめですね。
宮田 どれくらいの売上が必要かどうかから、必須のコアスキルを探っていくイメージでしょうか?
村尾 売上というよりは、「この会社はなぜ存在しているんだっけ?」というところまで掘らないと、どういう人材が必要かを決められないと思います。採用や育成はビジネスの肝ですから。
宮田 ミッションから逆算しつつ、コアに身に着けてほしいスキルをちゃんと言語化しておくことで、早い立ち上がりを実現していくということですね。
村尾 スキルをどの期間で伸ばすかまで狙って立ち上げなければだめです。成長より前に「売上に直結していない」という目で見られてしまうと本来伸ばせたはずのメンバーがかわいそうです。会社の責任として徹底的にやらないと絶対に育ちません。
宮田 田中さんは、プログラムづくりをどう実施されていますか?
田中 提案のプロセスや顧客の状況に応じた質問への対応の仕方などが詰め込んだ「プレイブック」をつくっています。ただ、このプレイブックには正解がありません。だからこそ常にアップデートする必要があるし、あくまで現時点で正しいと思う仮説のことを「プレイブック」とかっこよく呼んでいるだけに過ぎません。ではその仮説はどこから立てているかというと、トップセールスへのインタビューです。「あなたはセールスとして超売れているけれど、こういうプロセスを経ているからという理解で合っていますか?」と確認します。会話するなかでトップセールスから「それは違います。こうやっています」と言うような話を引き出しながら、現時点で得られる仮説を整理し、「現時点では僕たちはこれが正攻法だと思っている」ものを新人に落とし込んでいきます。