海外で先行しているセールス・イネーブルメントのトレンド
R-Squaere & Companyは昨年7月に立ち上がったスタートアップ。同社は、近年増加している「セールス・イネーブルメントチームを立ち上げたい」という企業に向けたコンサルティングサービスを提供しながら、よりデータに基づいたイネーブルメントを実現するためのシステムの提供も視野に入れその開発にも取り組んでいる。
山下氏自身は、セールスフォース・ドットコムで、約7年半営業の生産性を上げるというテーマに取り組み、日本と韓国のイネーブルメントプログラムの統括をしてきた。
「セールス・イネーブルメントという言葉を聞くことが増えてきていると思います。しかし、その実態は何なのか、どう取り組めば良いのか悩んでいる方も多いです。海外動向から事例に至るまでを多くの人に共有すべく、昨年末に書籍を出版しました。本日も書籍の内容も交えながら、体系的な理解と構築の方法をお話しできればと思っています」(山下氏)
営業組織改革のトレンドとして注目される「セールス・イネーブルメント」を、営業に関連する取り組みを統合的に組み立て、成果を数値化して管理できるようにするもの、つまり「成果起点の営業人材開発」だと同氏は定義している。
日本ではまだ馴染みの薄い概念かもしれないが、海外では5~7年先行してマーケットができあがっており、企業の6割がチームを立ち上げて組織的に取り組むようになってきているというデータも存在している。企業のイネーブルメントへの取り組みが加速するのに合わせ、専門人材の増加も顕著だ。たとえば、LinkedInにおける「Enablement Job」の推移を見ると、3年間で3倍以上に数が増えてきている。
専門人材である「イネーブラー」を支える団体もまた増えてきている。いわゆる人材開発協会ATD(Association for Talent Development)のフレームワークでは営業の活動管理と同等に重要な概念として「SALES ENABLEMENT」が位置づけられる。さらには、営業に関する採用や報酬など、営業部隊のトレーニングだけではなく、関連部門までもがスコープに含められるようになってきている。
世界各国からイネーブラーが集まる「Sales Enablement Society」では、支援の対象が直販営業以外も広がっている傾向が発表されている。パートナー営業もイネーブルメントの対象とすることがもはや一般的になりつつあるという。
保守やカスタマーサービスなど販売後のサポートを対象とするものは、「カスタマーサクセス・イネーブルメント」と呼ばれ、顧客やパートナーを含む収益部門全体を対象にした「レベニュー・イネーブルメント」なども今後注目していくべき概念だと紹介された。