富士フイルムビジネスイノベーションは、東京大学松尾研究室発のスタートアップ企業であり、生成AI技術に特化したソリューションを提供するneoAIと、販売および技術提携に向けた協議を開始する基本合意書を締結した。
背景
富士フイルムビジネスイノベーションは、長年にわたり企業における業務プロセスを、文書管理の観点から整理・最適化する環境の構築を支援してきた。その過程で業務プロセスの構築ノウハウに加え、企業内データを体系化しドキュメントを活用するための自然言語処理技術(※1)や、非構造化データを構造化データに再構築する技術開発にも取り組んでいる。
一方neoAIは、日本語に特化した独自のLLM(大規模言語モデル)やオンプレミス環境(※2)で生成AIを運用し、高いセキュリティを保ちながら高精度の出力を可能にする独自のアルゴリズム(※3)を有しており、とくに品質要求の厳しい金融機関の業務効率化において、さまざまな導入実績がある。
両社は、それぞれの強みを融合することで、顧客が企業内のデータを有効に活用し、精度の高い業務特化型生成AIを利用できる環境の提供を目指す。その実現に向け、販売・技術提携に向けた協議を行う。
※1 人間がコミュニケーションで使う自然言語を、コンピュータが人と同じように利用するための技術
※2 自社内にサーバーやシステムを設置して運用する環境。生成AIは、クラウド環境で利用することが一般的だが、金融機関など機密情報を扱う機関では、セキュリティの観点でクラウド型生成AIの利用が難しい場合があり、外部のネットワークに接続しないオンプレミス環境で利用できる生成AIが求められている
※3 生成AIに検索システムを組み合わせることで、回答の精度を向上させる技術「RAG(Retrieval Augmented Generation)」の精度を高めるアルゴリズム
主な検討内容
- 富士フイルムビジネスイノベーションのドキュメント関連技術とneoAI独自のアルゴリズムを搭載した生成AIプラットフォーム「neoAI Chat」(※4)を組み合わせた、業種・業務特化型データの利活用を推進する販売・サポート体制の構築
- 富士フイルムビジネスイノベーションのクラウドサービスとneoAIの生成AIプラットフォームneoAI Chatを連携させるための技術開発、導入実績をベースにした新たなサービスメニュー開発に向けた技術提携、および技術者の人材交流
なお、本協議に先立ち、富士フイルムビジネスイノベーションはneoAIの生成 AIプラットフォームを活用したPoC(Proof of Concept:概念実証)を、金融機関や不動産業などの顧客に対して1年間にわたり実施した。その結果、富士フイルムビジネスイノベーションは、neoAI独自のアルゴリズムを実装している生成 AIプラットフォームが、さまざまなデータ活用とアウトプットを可能とすることなどの有用性・実用性を確認した。
※4 neoAIの提供する、社内データとLLMを組み合わせAIアシスタント・エージェントをノーコードで生成できる生成AIサービス
富士フイルムビジネスイノベーション 取締役 常務執行役員 CTO 鍋田敏之氏のコメント
私は昨年まで、富士フイルムのメディカルシステム事業における開発責任者として、AI技術の医療現場への実装をリードしてきました。この経験を活かし、富士フイルムグループの技術アセットを最大限に活用し富士フイルムビジネスイノベーションにてAI技術を活用した事業の拡大を加速します。
このたびの東京大学松尾研究室で培った最先端技術を圧倒的なスピードで実用化し、提供するneoAIとの協業検討によって、医療、金融、教育、政府、自治体など多岐にわたる分野での先進的なAI実装の加速を進めていきます。この協業を通じて、多くの企業のDX推進や新たな価値創造に貢献してまいります。
neoAI 代表取締役CEO 千葉駿介氏のコメント
neoAIでは、これまで金融機関や電力会社などエンタープライズ企業を中心に、50社以上の企業様に生成AIプラットフォーム「neoAI Chat」を提供して参りました。
生成AI技術を活用するためには、ドキュメントを中心としたデータ基盤の整備が不可欠です。故に、ドキュメント領域で多くのDXの実績を持つ、富士フイルムビジネスイノベーションとの本提携は、弊社のソリューションの提供価値を飛躍的に高める連携であると確信しております。
本提携をもとに、富士フイルムビジネスイノベーションと協力して、生成AIがもたらす果実を、日本全国津々浦々に、届けていきたいと思います。