部門KPIの達成では不十分 「顧客体験」にチームで向き合う
高橋(SalesZine) 共通言語の構築は、具体的にどのようなステップで進めるべきでしょうか?
徳田 定義することも重要ですが、その共通言語に則って活動した結果、本当に成果が出ているのかを検証することが重要です。この問題についてありがちなのが、開発からカスタマーサクセスまですべてのKPIをクリアしているのに、何故か売上につながらないというケース。その構図を次の図で示しています。
部門ごとに縦割りでは「このフェーズのKPIは達成しているから合格」と判断できても、横で見ると「顧客体験」が断絶し、5件のうち3件は不合格であることが多い。これが今、分業型を取り入れている企業の落とし穴になっています。共通言語として、「どのような顧客体験を提供しているのか」という着眼点が欠けているからです。
そういうサイロ的組織から脱却していくという意識改革がこれからの営業には求められ、いま注目されているRevOps(Revenue Operations)も、まさにそういう部分からスタートすると見ています。

徳田 そのため当社では、大手企業顧客4,000社の情報を記載した「アカウントスコアカード」を活用しています。カードにはVOC(顧客の声)スコアと売上に基づいたKGIの達成度が表示され、その中の項目として複数の構成要素とスコアが表示されていて、総合点やお客様の視点で見てどこが欠けているのかを数字で見ることができます。
総合点が低い場合、フォローされていない項目がハイライトされ、そこを改善すると点数が上がり、次年度にそれらの活動がVOCと相関性があるか確認します。
VOCが下がっていると我々のアプローチが間違っていたと気づくので、新しい営業方式や顧客接点のノウハウを身に付けていくというオペレーションができます。
このように、さまざまな組織にかかわっているチームセリングのなかでの共通認識、共通言語でひとつの企業を見ていくことが大切だと思います。

高橋(TORiX) 先ほど意思決定のタイミングの話をしましたが、エンタープライズ営業は上流から考えるべきなので、このようにスコア化されていると進捗具合が早い段階から俯瞰できて素晴らしいと感じました。
徳田 実際はほかにもお客様のプロダクトに対する評価も入れているのですが、そうなると評価を落としている要因も明確になってくるので、そこを直していくことで最善な営業や顧客接点を築くためのベストプラクティスが生まれてくるのです。
そういう意味で、まずやるべきは、目的をきちんと確認していくことです。そのために必要な営業のあり方や顧客接点のあり方を掘り下げていき、必要なデータが取れるのか取れていないのか、取れていないならどんな指標が必要かバックキャストしていく活動を、それぞれの組織の中で実践していくことをお勧めします。
高橋(TORiX) 私も徳田さんと同様に、エンタープライズセールスはチーム戦だと思っています。個人が卓越しているだけだと難しいというのは皆様も感じていると思うのですが、その中で、今日のテーマであった共通言語をつくる作業はそれほど難しいことではありません。
情報を収集して、どのように組織に展開するか。ただの情報共有で終わるのか、それともチームの目線をそろえる共通言語になるのかが分かれ道になります。今日私たちがお話しした内容が、後者を実現するきっかけとなったら幸いです。

