グローバルで見る「成功する営業組織」の3つの共通項
──LinkedInでの組織拡大を牽引し、2025年からはHubSpotのCSO(Chief Sales Officer)に就任されています。グローバルの営業組織を率いてきたCohen氏から見て、文化や商習慣を問わず、時代を超えて成功する営業組織の共通項とは何だと思いますか?
Cohen 約30年、営業組織に携わる中で、最高のパフォーマンスを発揮する組織には、時代や文化を超えた3つの共通項があると考えています。
ひとつは、組織全体が非常に「好奇心旺盛」であることです。優れた営業組織は、単に自社の製品やサービスを売ることに終始しません。顧客が抱える真の課題を深く理解しようと努め、解決に向けて、戦略的なアドバイザーとして行動するのです。
ふたつめが「成長マインドセット」です。これは、マイクロソフト CEO Satya Nadella(サティア・ナデラ)氏の言葉にある「何でも知っている会社ではなく、何でも学んでいく会社」へシフトするという考え方とも共通します。成果を出す組織は、顧客からも市場の動向からも、常に学びを得ようと絶え間なく努力し、進化し続けます。
そして3つめは、優れた営業組織は、非常に多様なバックグラウンドを持つ人々で構成されているということです。異なる経験、スキル、視点を持つ人々が集まり、互いに学び合うことでより多角的に市場をとらえる。そうして多様な市場の変化に適応できる能力は、これからの営業組織にとって非常に重要な成功要因となります。
AI活用で、営業の仕事はより複雑でシンプルに
──『HubSpot Life』において、AIが営業担当者を「信頼されるアドバイザー、そして最終的にはビジネスパートナー」へ変革するとおっしゃっていました。具体的に、AIは営業担当者にどのような進化をもたらすのでしょうか?
Cohen AIにより、営業担当者の仕事はさらに複雑になり、同時に、非常にシンプルになっていくでしょう。
まず「複雑化」についてです。現在、グローバルで約45%の営業担当者が、データ入力や簡易的なリサーチといった事務的な業務でAIを活用しています。AIがそれらの業務を効率化することで取引成立までのサイクルが短縮され、結果として、より難易度の高い顧客課題に挑み、取引を拡大できるようになります。これにより、平均販売価格(ASP)の向上と、取引の複雑化が生じるのです。
次に「シンプル化」です。営業担当者の本来の仕事とは、顧客と関係性を築き、信頼を得て受注につなげていくことです。AIが事務的な業務を肩代わりすることで、営業担当者は顧客とのコミュニケーションに集中できる。つまり、仕事が非常にシンプルになるのです。
私が営業担当者だったころ、まさにこのようなテクノロジーを夢見ていていました。それが今ここにある。ChatGPTの登場からまだ3年も経っていないにも関わらず、世界の半数近くがAIを活用し、市場が大きく変化している。本当に信じられないことですね。

