お客様の声が起点に 高知支社が実践するパートナーとの価値提供
──まさに、直販営業とはまた違う難しさですね。ここからは、DXエコシステムのもと、SaaS商材の提案で成果を上げている高知支社の取り組みについてうかがいたいと思います。まず、高知支社ではどのような体制でSaaS商材を扱っているのでしょうか?
田村 前提として、すべてのSaaS商材を当社で提案できるわけではありません。当社と共創関係を築くことが期待でき、そのうえでお客様を支援してくださる企業との連携が中心となります。そのうえで、私たちはバックオフィス系やセキュリティ関連のSaaS商材に特化しており、コーディネートセールスのメンバーがお客様へ提案しています。
──「コーディネートセールス」とは、どのような役割なのですか?
田村 コーディネートセールスは、ICT事業に特化した職種です。直接的な財務目標は持たないかわりに、受注につながる「関与業績目標」を持ちます。パートナー企業とコンタクトをとり、パートナーの商材がリコージャパンとしてお客様に提案可能かどうか見極めたのち、パートナーの商材を自らICT領域のお客様へ提案する役割です。
自社が開発した製品ではなくても、お客様に紹介する以上、責任をもってお客様への説明や問い合わせへの回答を行わなければなりません。増え続ける多様なSaaS商材についても知見を高めながら、お客様の課題解決に向けて日々活動を行っています。

──パートナーセールス共通の課題かもしれませんが、他社の商材を提案するうえで、難しさはありませんか?
田村 ありますね。やはり自社製品ではないため、すべてのSaaS製品を把握するのはなかなか難しい面があります。実は、お客様から「こうした製品がある」と教えていただくことも多いのです。
その背景には、コロナ禍によりオンライン商談が定着し、リモートで営業活動を展開する企業が増えたことがあります。リモートでSaaS商材を提案されたお客様から、直接「こういう業務課題を改善したいんだけど、リコージャパンでこのSaaS商材は扱える?」とご相談をいただいたことがきっかけで、SaaS企業へコンタクトをとり、お客様の課題に対して一緒にどのような提案できるか見極めるという流れが生まれています。
たとえば、「Bill One for RICOH」という受領請求書サービスも、リコージャパンのお客様が導入したことをきっかけに、リコージャパンからSansan社へコンタクトをとった結果、共創できることがわかりました。現在、請求書などの取引業務をサポートする「トレード帳票DXシリーズ」のひとつとしてラインアップをしています。
──お客様からの声が、パートナーとの関係構築の出発点になっているのですね。どのような場面でリコージャパンさまへ相談がくるのでしょうか?
田村 SaaS商材は、ひとつの業務に特化していることが多い。しかし、お客様は「この業務の最初から最後のプロセスまで、一貫して任せたい」という課題を抱くことがあります。そこで、当社が複数のSaaS企業の間に立ち、パートナーとして、各社のさまざまなSaaS商材を組み合わせてご提案させていただくことがあります。
自社製品ではないからこそ、SaaS商材は提案の難しさもあります。この課題を乗り越えるため、リコージャパンでは、個社ごとの提案資料の作成から商談同席、その後の導入支援まで、パートナーと一緒にスムーズにお客様への提案・導入が進められる体制を築いています。その結果、高知支社における「トレード帳票DXシリーズ」全体の売上も年々増加しています。
このようにパートナーと二人三脚で連携し、「マルチベンダー」として一貫して課題を解決できる点が、当社の強みだと言えますね。