ステークホルダーの多さは覚悟のうえ ビジョン浸透の道のり
──具体的に、どのように協働を進めてきたのでしょうか。
林 まずはビジョンの明確化に注力しました。カルチャーも人も異なる他社が目線を合わせるためには、何よりも先にビジョンを言語化して落とし込むことが非常に重要です。今回の両社による取り組みのビジョンは「日本企業の生産性向上に貢献する」こと。目指すべき未来が見えていたからこそ、同じ目線で進むことができました。
鈴木 1時間ほどの定例会議を週2回、6ヵ月にわたって実施し続けましたね。現在も週1回、案件の進捗やマーケティング施策などについてミーティングしています。

通信事業会社、ウェブアプリ会社を起業し、クラウドカメラサービスを提供するセーフィーを経て、LayerXに入社。DXに関する3部門、マーケティング・エンタープライズ・パートナーシップの部長を兼務する。
──両社のパートナービジネスは、どのようなメンバーや組織体制で推進しているのでしょうか。
鈴木 LayerXの体制としては、代表の福島をはじめ、バクラクの事業部長、私、パートナーアライアンスメンバーが3名、100支社以上を回って案件を管理している出向者ひとりを配置しています。加えて、フィールドセールスのメンバーが各商談の状況に応じてサポートを行っています。
林 三菱UFJ銀行では、LayerXさんからの出向者も含めた4名でLayerXさんとのパートナービジネスを推進しています。各支店にどう働きかけていくのか、いかに行内に想いを浸透させていくかなどについて、LayerXさんと同じ目線で取り組んでいます。
──一筋縄ではいかない部分もあったと思います。困難だった点などはありますか。
岩崎 やはり「今までSaaS商材は紹介形態に留まることが多かったのに、なぜそこまでやるのか」「なぜLayerXさんと組むのか」という声は挙がりました。こうした疑問を解消するために、担当層からマネジメント層まで、意図や想いを広く浸透させる必要がありました。一方的な発信で終わらせず理解を得ることが、もっとも気をつけなければならない部分でしたね。
たとえば、重要性を説明するだけではピンと来ないでしょうから、バクラクの提案を聞いてくださったお客様の“生の声”を拾うようにしていきました。実際に評価いただいたり、喜んでいただいている声を各支店や他部署に伝えることで、今回の提携意義や我々が持つ期待感を地道に連鎖させていったんです。また、鈴木さんにも、弊行の関係部署に対して、何度もプレゼンやデモを実施してもらいましたね。

鈴木 日本トップクラスの銀行ですから、社内に幅広いステークホルダーがいることは覚悟して臨みました。2~3ヵ月にわたって役員層から中間部署の方、現場の方にまでプレゼンを繰り返しましたね。
──反対に、パートナービジネスの推進につながったポイントはあるでしょうか。
鈴木 社内報やイントラへの掲載など、三菱UFJ銀行さんが全面的にバックアップしてくださったことです。今後はお客様に向けたDMでの告知も予定しているとうかがっています。
岩崎 上層部と実務層それぞれで、両社間のビジョンが早い段階で合致できていたため、あとは他部署に伝播させるだけだという安心感がありました。加えてLayerXさんと毎週ミーティングしている中で、強い信頼関係が構築されたのも、スピード感をもって推進できた理由のひとつだと思います。実際、2023年秋から本格的な協議を始めて2024年4月に基本合意したあと、半年間で詳細を決定し、2024年10月にキックオフを実施することができています。