CRM(顧客関係管理)搭載のカスタマープラットフォームを提供するHubSpot Japan(以下 、HubSpot)は、第6回「日本の営業に関する意識・実態調査2025」を実施した。
HubSpotは2019年から「日本企業の売上を支える営業組織の現状と課題を明らかにし、日本の営業組織の次のステップを考察する」ことを目的に、法人営業に関する実態と意識の調査結果を発表している。
今回の調査は、営業スタイルやキャリア観、テクノロジー活用に対する意識に世代間の違いがあるのかを確認することを目的として実施。また2019年から継続的に収集している時系列データをもとに、テレワークやCRMの普及、業務における生成AIの浸透など、時代とともに移り変わる働き方・意識の変化を洗い出し、営業組織がどのように成果を高めていくべきかを探ることも目指した。
営業というキャリアに対する考え方
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営業担当者と営業責任者に「営業職に就いた際の、営業というキャリアに対する考え」について、「他職種への転向や起業のためのステップとしたい」「営業のエキスパートや営業部門の管理職になりたい」「覚えていない」の三択でたずねた。その結果、20代の68.2%が「他職種への転向や起業のためのステップとしたい」と回答し、30代以上の各世代においては約半数または半数以上が「営業のエキスパートや営業部門の管理職になりたい」と回答する結果となった。
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営業担当者と営業責任者に営業職に就いた際の「営業を選んだ理由」を複数回答でたずねたところ、「やりがいがありそうだから」(26.7%) が最も多く、続いて 「希望していないが会社から指定された」(24.5%) が選ばれた。営業のキャリアを通じてやりがいを得られることを想定し積極的に営業職を選んだ層がいる一方、会社側の意向で営業のキャリアを開始するケースも多いことがわかった。
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さらに営業職に就いた時期を「1990年より前」「1990~1999年」「2000~2009年」「2010~2019年」「2020年以降」の5つに分け、それぞれで「営業を選んだ理由」の上位3項目を比較した。その結果、2010年以降に営業職に就いた層では、2009年以前に営業職に就いた層では上位3項目に選ばれなかった「自己成長のため」や「安定した収入のため」がランクインした。
このような結果の背景として、リーマンショック(2008年)前後に深刻化した世界的な不況・就職難があることが推察される。自己を成長させなければ安定した収入を得られないといった危機感が持たれるようになったことで、この時期以降、「自己成長」や「収入の安定」を動機に営業職に就く層が増えたことが考えられる。
営業において大切だと考えていたこと
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「新卒で就職した頃に営業において大切だと考えていたこと」を複数回答形式でたずねたところ、全体の55.5%が「コミュニケーション能力」を挙げ、どの世代でも高い割合を示した。対人折衝や関係構築が欠かせない営業職において、相手の状況や意図を踏まえながら適切なタイミングで、適切な情報を適切な方法で伝える能力は時代や年齢を問わず重視されていることがうかがえる。
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さらに、回答を「20代」「30代以上」のふたつのグループに分けて比較したところ、両世代とも「コミュニケーション能力」は上位に挙がったものの、それ以外で重視するスキルに関しては違いが見られた。
<20代が重視すること>
- コンサルティング能力
- セルフモチベーション管理能力
- 時間管理能力や計画性
- ストレス耐性
- 飛び込み営業などをする泥臭さ
<30代以上が重視すること>
- 業界知識などの専門性
- 人脈や人間関係構築力
CRMの導入率
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売り手全体に「所属する企業でどのような方法で顧客情報を管理しているか」をたずね、そのうち「パソコン/クラウド上でCRMソフトウェアを導入している」と回答した割合を集計した。その結果、2024年度のCRM導入率は37.2%と、2023年度(36.2%)から1.0ポイント上昇し、わずかではあるもののデジタルシフトが着実に進行している実態がうかがえた。
生成AIの認知と活用
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生成AIを知っているかどうかを営業担当にたずねたところ、「聞いたことがない・知らない」と回答したのは14.5%で、回答者の85.5%は生成AIについて認識しているという結果となった。一方、「実際営業活動のために生成AIを活用したことがある」と答えた人は28.9%となり、認知と活用の間にギャップがあることがわかった。
さらに年代別に見ると、20代では認知率が81.5%、活用率は46.3%と差が35.2ポイントであったのに対して、60代では認知率が90.3%、活用率は24.2%となり、66.1ポイントの差が生じた。若い世代ほど「認知から 実際に使ってみる」までの移行がスムーズである一方、年齢が上がるにつれ、認知はしていても活用には至らない傾向があることがわかった。
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インターネットの普及が進んだ時代に育ったミレニアル世代とそれ以前に育った世代を「44歳以下」「45歳以上」と分けたうえで、それぞれの世代が「買い手」として重視することや購買プロセスを調べた。
まず「購入する商品・サービスや企業・ブランドについてどのようなことを重視するか」を複数回答でたずねたところ、買い手全体では次のような順番となり、商品の基本的な仕様に関わるような項目はどちらの世代も重視していることがわかった。
- 価格(64.9%)
- コストパフォーマンス(57.3%)
- 機能(47.2%)
世代別に見ると、44歳以下の回答者は「セキュリティやデータの保護がしっかりしていること(52.9%)」「ブランドへの信頼(51.0%)」など幅広い項目を重視しており、売り手はさまざまな観点でアピールをしていく必要性が推察できる。
調査概要
「HubSpot年次調査:日本の営業に関する意識・実態調査2025」
- 調査企画・実施:HubSpot Japan
- 調査委託先:マクロミル
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調査対象:
- ビジネスシーンにおける「売り手」計1,545名(経営者・役員515名、法人営業組織の責任者515名、法人営業担当者515名)※売り手側は個人事業に近い企業や大企業の回答を省くため従業員数51名〜5,000名に絞って調査
- ビジネスシーンで商品やサービスの「買い手」となる経営者/役員/会社員 計515名
- 調査方法:オンライン上でのアンケート調査
- 実施期間:2024年11月14日〜2024年11月15日
- 調査地域:日本全国
※本調査において「営業」は「法人営業」を指す
※調査結果は、端数四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある