カスタマーサクセスとは「ビジネスアプローチ」
──カスタマーサクセスの定義を教えてください。
1980年~1990年代に普及したカスタマーサティスファクション(顧客満足)と対比するとわかりやすいでしょう。カスタマーサティスファクションは、顧客へ最良の体験や印象を与えて「買って良かった」と満足させるべきだという考えです。製品・サービスをどのように活用して、どのような成果を得るかは顧客次第でした。
これに対して、顧客の成果まで踏み込んでコミットするべきだと考えるのがカスタマーサクセス(顧客の成功)です。よりシビアに成果が求められるBtoB領域で、いち早く導入されました。私の感覚では2010年ごろに誕生し、2015年ごろにアメリカで、2018年ごろに日本で本格的に取り組まれたようです。Gainsightが作成した公式で表すと次のようになります。
CS(カスタマーサクセス、顧客の成功)=CX(カスタマーエクスペリエンス、顧客の体験)+CO(カスタマーアウトカム、顧客の成果)
※出典:The Essential Guide to Customer Experienceカスタマーサクセスという言葉は、顧客に成果を与えるメソッドや戦略、それを実行する部門を示す場合があります。しかし本来は、そうした具体的な何かを表す言葉ではありません。そのため「概念」「考え方」と表現する人も多いですね。Customer Success Association(CS協会)により定義されていますが、やや抽象的です。そのため、私はGainsightの考えを踏襲しながら「顧客に成果を与える」という「ビジネスのあり方・方向性」であるととらえ、「カスタマーサクセスとはビジネスアプローチである」と定義しています。
──なぜ、カスタマーサクセスが重視されているのでしょうか。
ひとつはモノが増えたからです。「三種の神器」に象徴されるように、モノが少ない時代は「所有」がゴールでした。しかし現代はモノが増え、所有に留まらず「利用」による成果を重視する時代が到来したのです。
SaaSの台頭はもっとも象徴的なムーブメントですね。従来、IT化するならフルスクラッチで開発するのが主流でした。しかしIT化の本来の目的は、顧客へスピーディーに自社のサービスを届けて最良の体験・成果を与えること。そのため、メンテナンス等の必要があるオンプレミス型から、同等の成果が得られるSaaSへの移行が進んだのです。
所有から利用へと移り変わった今、成果が出ない製品・サービスは解約されてしまいます。売り手は「売って終わり」ではなく、顧客が成果を出せるように支援しなければなりません。そこでカスタマーサクセスが注目され始めたのです。