R-Square & Companyとトキハナツが統合し
Xpotentialとして始動
Xpotentialは、日本におけるセールスイネーブルメントの第一人者として豊富なコンサルティング支援実績を持つR-Square & Companyと、データサイエンスを強みとするトキハナツの2社が経営統合し、2024年1月に始動した企業だ。事業内容としては、「セールスイネーブルメント」——いわゆるデータドリブンな営業人材育成や組織開発に特化したコンサルティングサービスや、クラウド型アプリケーションの提供を行う。
冒頭で、山下氏と梅野氏は経営統合を選択した理由について言及した。山下氏は、Sales Tech領域におけるデータ分析のさらなる可能性を感じたからだと話す。
「Sales Tech活用と言うと先進的な技術が導入されているように見えますが、いざ現場に入ってみると、データが分断されていたり、そもそも入力されていなかったりするものです。データサイエンスの価値を示せれば、営業組織がSales Techを生産性向上のために有効活用できるようになると考えました。これまで以上にデータドリブンな営業強化のアプローチを提供したいという狙いが、今回の統合の背景にはありました」(山下氏)
データサイエンティストとしてのバックグラウンドを持つ梅野氏によると、ECやスマートフォン向けゲームなどの市場のように、取得したデータを事業展開に活かすことが当たり前になってきている領域がある一方で、「セールス」の領域に関しては、まだ伸びしろがあると感じているそうだ。
「『DX』という言葉が流行り、これまではデジタル化されてこなかった領域でも、データが把握できるようになってきました。営業で言えば、コロナ禍以降、オンライン商談が当たり前の時代になり、録音・録画した商談を書き起こしたり、商談内容を分析したりできるツールが普及しました。一方で、取得したデータにしっかりとハイライトを当て、分析がなされているとは限りません。この営業プロセスにデータサイエンスを組み込めれば、『人的資本経営』の文脈における労働生産性向上にも寄与できると考えています」(梅野氏)
セールスイネーブルメントとは「データを通じて、人の行動変容を促し、営業成果を継続的に最大化する取組み」
「セールスイネーブルメント(Sales Enablement)」という言葉を文字どおりに訳すると「営業が何かをできるようにする(=成果が出せるようにする)」となる。山下氏は定義について次のように語る。
「市場にはセールスイネーブルメントに対するさまざまな捉え方があると承知したうえで、我々はセールスイネーブルメントを『データを通じて人の行動変容を促し、その結果として営業の成果を継続的に最大化する取組み』と定義しています」(山下氏)
営業の現場では、パフォーマンスの“バラツキ”がよく見られる。セールスイネーブルメントのアプローチでは、まずデータを分析し、営業が成果を挙げるための行動をとれるよう標準化することでバラツキを抑え、能力の底上げを図っていくわけだ。つまり、組織レベルでの行動変容を促すような取組み自体を指している。
続いて山下氏は、セールスイネーブルメントを成功させるためのポイントについて次のように説明する。
「ひとつめは、施策検討する際に“データドリブン”を取り入れることです。単なる育成やナレッジの共有よりも、まずは『なぜその取組みをやらなければいけないのか』という理由を明確にすることが大切です。そのためには、属人的な判断で施策を進めるのではなく、根拠となるデータから読み解く過程が欠かせないのです。また、営業成果のデータだけでなく、人に関するスキルレベルなどのデータなどもしっかりと整備し、何が営業のボトルネックになっているのかを捉えることが重要です。
ふたつめは、行動変容を実現するための施策がしっかりと組まれたら、施策の実行によって実際に成果が出たかどうかを可視化すること。データ分析ができたとしても、この部分が抜けていたら結果はともないません」(山下氏)
セールスイネーブルメントで立ちはだかる壁
企業が営業のデータ活用を進める際、SFAや関連システムを導入することが目的になってしまっていることが多い、と山下氏は指摘する。
「セールスイネーブルメントの観点では、もう一歩踏み込んで“営業組織強化にデータをどう活用するか”という観点で設計しなければいけません。そうでなければ、営業現場の理解度や納得性が深まらず、データ入力が進まなくなってしまいます」(山下氏)
山下氏はさらに、セールスイネーブルメントに取り組む際に立ちはだかる「一過性」「属人性」「ブラックボックス化」という3つの壁を挙げた。「一過性」は、1回施策を打っただけで終わってしまうこと。「属人性」は、たとえば「マネージャーでなければ施策を実行できない」という状態。そして「ブラックボックス化」は、データが可視化されておらず現状把握ができない状態を指す。これらの壁は施策が頓挫する原因となりやすいため、避けなくてはならない。実際、マネージャーが忙しくて新人のトレーニングが進まない、SFAを導入していてもデータ入力がなされていない、といった状況は散見されるという。
「こうした状況は、組織にとっても、個々の営業にとっても望ましくありません。新人が入社したら2〜3ヵ月で即戦力化できるよう、マネージャーの指導レベルを標準化する必要があります。さらに、ここでデータを活用して育成を進められれば、再現性を持って組織の目標を達成しやすくなるでしょう」(山下氏)
セールスイネーブルメントにおける「ROI」の重要性
Xpotential流のセールスイネーブルメントのアプローチは、データドリブンで「ROI」(営業成果)を創出し続ける仕組みを構築することにある。つまり「トレーニングをして終わり」という姿勢ではなく、「常に営業強化の施策が回るようにオペレーションのモデルを構築する」ということだ。
具体的には、次の図のように「Plan:ROIモデルの設定」「Do:行動変容施策の提供」「See:ROIの効果検証」という手順を踏んでいく。山下氏は例を用いながら次のように解説した。
「まず“Plan”では、営業組織において、何のスキルをどのくらい上げれば、どれほどの業績インパクトにつながるのか、データサイエンスを用いて仮説に基づく試算を行います。たとえば『ヒアリングスキルを上げたら、業績が10%くらい上がるだろう』という試算をするわけです。次に“Do”では、その試算に基づいた行動変容施策を立てます。それはトレーニングやマネージャーによるコーチングかもしれませんし、ナレッジの提供やシステムを導入することかもしれません。そして、実際にその施策によって効果が出たのか“See”で検証を行い、次の改善策につなげていくわけです」(山下氏)
「Do:行動変容施策の提供」にフォーカスし、外部のトレーニングなどを取り入れようとする企業は多い。しかし、施策によって“どれくらい改善したのか”というROIを示せなかったのが、従来の営業育成の限界であった。
梅野氏は「マーケティングにおいてデジタル広告のROI検証が行われているように、営業の人材育成においても『この施策を実行すればこれだけ効果が出る』と当たり前のように話されるような世界観をつくっていきたい」と展望を語った。
Xpotentialの強みは「ワンストップサービス×専門性×実績」
Xpotentialでは、セールスイネーブルメントの仕組み構築から運用支援まで、「コンサルティング」「クラウド」「BPO」を通じてワンストップで提供しているのが特徴だ。さらに今回の統合によって、R-Square & Companyが培ってきた豊富な支援実績にトキハナツのデータサイエンスの専門性が備わったことは、同社のユニークな付加価値になっている。
データサイエンスの専門性が高まったことについて、梅野氏は「今までにあった単なる“営業コンサル”のようなサービスとは、一線を画すことを期待していただけると嬉しいです。ぜひカジュアルな姿勢で構いませんのでお声がけいただければと思います」と語った。
また山下氏は「データを活用して多くの営業組織をより良くしていきたいという思いで、我々は事業を展開しています。今後もイネーブルメントに関するさまざまな情報を発信していきますので、楽しみにしていてください」と、セッションを締め括った。
データドリブンで営業成果(ROI)を最大化する営業人材育成の仕組み
「セールスイネーブルメント」
「なぜ営業能力の差は縮まらないのか」「なぜエース営業に依存しチームの底上げができないのか」「なぜOJTだけでは成果にばらつきが出てしまうのか」「なぜトレーニングを実施しても効果を感じないのか」「なぜ新人営業が即戦力になるまで時間がかかるのか」──。
このような問いに真っ向から向き合う「営業組織・営業パーソンの成功を本気で考えた新しい育成の仕組み」こそが、Xpotentialが考えるイネーブルメントのコンセプトです。サービス紹介資料は、Xpotential 公式サイトよりダウンロードください。