超内向型の私が売れたきっかけは「リーダーのひと言」
まずは私の体験談からお話ししましょう。私は子どものころから“超”がつくほど内向型で、社会人としてやっていく自信がまったくありませんでした。やりたいことも得意なこともなかったため、仕方なく営業を選んだというのが実際のところです。心の奥では「営業を経験すれば、少しは人とのコミュニケーションが上手くなるかもしれない」という希望もありました。
ところが新卒で入った会社では、「モノを売ると、製品の欠陥やクレームでお客様に迷惑をかけてしまうかもしれない」という思いから、どうしても本気で営業することができませんでした。その後、リクルートへ転職します。前職では営業として中途半端に終わってしまったため、自分が営業としてどこまで通用するのか確かめたいと思ったのです。営業が強いことで有名なリクルートで営業として活躍できれば、自信がつくだろうとも考えました。
しかし、それは甘い考えでした。どれほど頑張っても、まったく売れない日々が続きます。6ヵ月間、私の売上はゼロ。同僚たちは性格も明るく積極的で、商談でも、場を盛り上げながら成績を伸ばしています。その様子を見て、「自分も同じように振る舞わなければ売れない」と思い込んでいました。無理に笑顔をつくり、トークの練習を繰り返し、そして客先に行っては断られて帰ってくる。この繰り返しです。苦手を克服する練習も辛かったですし、結果はおろか、売れる手ごたえさえ感じられない日々でした。
「やはり自分は営業に向いていないんだ」と、会社を辞めようとしたときです。当時のリーダーが、私に声をかけてくれました。
明日、俺と一緒に営業に行くか?
営業同行の誘いです。気遣って声をかけてくれたのは嬉しかったものの、内心では「リーダーの営業を見ても、参考にはならないだろうな」と思っていました。リーダーは全国トップクラスの営業で、神業的な営業スキルを見せられても、自分にできるはずがなかったからです。
ところが、そんな思いは大きく裏切られました。いざ客先に行くと、リーダーは人が変わったかのように大人しくなりました。お客様から話を切り出してきて、それに静かに応える。笑いをとることも、盛り上げることもしない商談が淡々と続きました。
すると、お客様のほうから「じゃあ、これをお願いします」と言ってきました。商品が売れたのです。リーダーは静かに「ありがとうございます」と、申込書を書き始めました。その日は3件商談へ行き、その調子ですべて受注したのです。
なぜ売れたのか、そのときの私にはわかりませんでした。帰りの車の中で、私はリーダーに聞きました。
あんなにしゃべらない営業でも、売れるんですね
そのときのリーダーの言葉が私の人生を変えました。
営業なんて、しゃべらないほうがいいんだよ。その点、君は、本当は営業に向いているんだけどな
自分は営業に向いてないと思っていましたが、リーダーは向いていると言ってくれた。それに、その日見た営業スタイルなら、自分もできそうだと思わせてくれました。
売れた理由はわかりませんでしたが、ひとつだけわかったことがありました。それは「静かな営業でも売れる」ということ。
それを機に、私は自分の営業スタイルを見直して、改良を加えながら試していきました。すると徐々に手応えが出始めて、売れるようになったのです。結果的に、その同行から4ヵ月後には営業達成率で全国トップになっていました。そのときの経験をベースに、今では営業を教える立場として活動しています。