「何かに夢中になっている人」は魅力的である
初めて会った際、お互いの緊張を解くために“ちょっとした雑談”をする。いわゆるアイスブレイクと言われるものだ。こういった場面で、少し話をしただけで「この人の話は面白いし、魅力的だ」と感じることがある。一方で、話をしていても「まったく印象に残らない」と感じる人もいる。
印象に残れば、仕事をお願いしたい際に「あの人はどうだろうか」と思いだす。印象に残らなければ声が掛かることはない。さて、両者の違いは何だろうか?
ある営業会社の人事部長と話をしたときのこと。面接の際に“当たり障りのない話をする人”は印象に残らないという。受け答えはしっかりしており、志望動機などの内容も何の問題もない。こういった人を採用すれば無難な感じもするが、その後営業としてなかなか結果を出さないという。
「一方、『エピソードが面白い』人が大化けするケースは少なくないんですよ」と言う。自己アピールや志望動機が今ひとつ。しかし、スポーツや趣味の世界に没頭しており、その話が面白い。こういった人はなぜか結果を出すという。
この部長の話を聞いて、あるトップ営業スタッフを思い出した。営業スタッフAさんは銀行員から生命保険の営業職に転職した。Aさんの趣味は自転車。私がヒルクライムで有名な榛名山(群馬県高崎市)の近くに住んでいると話すと、自転車について熱く語り始めた。部品を取り寄せカスタマイズして、息子とふたりでいろいろな山を登っている。自転車にあまり興味がない私でも飽きることなく聞き入ってしまった。
もうひとりは住宅営業のBさん。Bさんはとにかくゴルフにハマっている。最近は“ダブルス”にも出て、上位に入ることも。かなりの腕前だ。
私もゴルフをするためボールについて質問してみた。するとBさんは「知られていないのですがこのボールが良いですよ。通常のボールより数グラム重くなっていて飛びますし、アゲインストにも強いです」と話をしてくれた。スイング理論から道具まで、とても詳しい。とにかく楽しい時間だった。
私はゴルフが趣味なのでBさんのほうが話は盛り上がったが、Aさんの話も甲乙つけがたいくらい面白かった。自転車の世界に縁がない私にも十分楽しめたのだから。とにかくこのふたりからは強烈な魅力を感じた。
いろいろな人にお会いするが、“何かに夢中になっている人”は魅力的と感じる。こういった人と話をすると「今後も縁を持ちたいな」という思いになる。このタイプのトップ営業スタッフは「仕事の話をしていないのですが、なぜか契約に至ります」と言う。人としての魅力にお客様が吸い寄せられる。だからこそ自然に結果がついてくるのだ。