コロナ禍、文章のやりとりで損をする人は少なくない
春になると新人研修を担当させていただく。主な参加メンバーは新入社員だが、ほかの部署から異動してきた人もいる。 研修の中で「今は実際に会って話をするより、メールやSNSなどの文字でやりとりするほうが圧倒的に多くなった」というた話をすると、ほとんどの人が実感しており、大きくうなずく。コロナ禍でメールのやりとりが圧倒的に増えたと感じる人は多い。
そのあと続けて「文章のやりとりでかなり損をしている人が少なくない」という話をする。これも実感している人が多いのだろう。ほとんどの人に共感してもらえる。このような話は事例で説明するとわかりやすい。今回は4つのケースを通して“文章のやりとりで問題になった例”を紹介する。これを他山の石として欲しい。
■ケース1 納期の遅れをLINEで知らせ、大問題に
ある営業担当者が取引先に商品を納める際、流通の都合で1日遅れることになった。取引先の担当者とはLINEでつながっており、次のようなメッセージを送った。
【明日の納期は少し遅れそうです(泣く絵文字)】
このメッセージを受け取った担当者は激怒し、その後の取引をやめた。1日の納品遅れで会社がダメージを受けることになったからではない。この対応に幻滅し付き合いをやめてしまったのだ。この営業スタッフは納期の遅れをLINEで伝えるのではなく、電話で直接話をするか、アポをとって直接謝罪するべきだった。顔を合わせて事情を説明すれば担当者もきっと許してくれただろう。LINEのメッセージひとつで済ませようとしたことで、今まで築き上げた信頼を一瞬で失ったのだ。
この事例を聞いて社会人経験のある人は「これはマズイよね」と理解する。しかし、新入社員の中には「なんでダメなんですか?」と疑問に思う人も少なくない。実際、以前担当した研修では「納期に間に合わず本当に申し訳ない、という感情を絵文字で伝えたのだから良いのではないでしょうか」と意見してきた人もいる。
SNSを活用して、「直接謝罪したい」と電話やZoomのアポをお願いするのであれば問題ない。しかし、このメッセージだけで済ませた時点で信頼は一瞬で消えてしまう。こういったときこそ、オンラインであっても顔を合わせ、状況の説明や謝罪をする必要がある。それさえ知っていれば関係を切られることはなかっただろう。
この例は、社会人経験があれば十分わかっている人も多いだろう。しかし、新人でなくても間違ったやりとりをしている人は少なくない。社会人経験が5年、10年あっても、やってはいけない行為をしている人も実は意外に多いのだ。