クロージングとは?営業が商談の成約率を上げるテクニック
クロージングは顧客との商談で契約を締結することを指し、とくに営業活動では、成約のために行うアプローチ全体を指します。簡単に言えば、顧客に決断を促すことです。
成約率を上げるためには重要なプロセスですが、営業担当者の中には、クロージングに苦手意識がある人も多いようです。会話が弾み、顧客も興味を持ってくれていたはずなのに、なぜか契約には至らない……。
そこで今回は、クロージングのテクニックやコツについて解説します。顧客と契約を結ぶための「最後のひと押し」として何をすべきなのか、改めて考えてみましょう。
なぜクロージングが必要なのか?
クロージングがうまくいかない理由は、大きく分けてふたつあります。
ひとつは、焦って強引に売り込んだり、タイミングを間違えたりと、クロージングの方法が間違っているパターン。これは、クロージングのテクニックやスキルを学ぶことで改善できます。
もうひとつは、そもそもクロージングをしていない場合です。断られることを恐れたり売り込みに罪悪感があったりして、契約の意思確認をせず、「ご検討の上ご連絡いただけましたら」のように曖昧にしてしまうパターン。実はこの、クロージングをせずに商談失敗になっているケースは多いのです。
決断の機会が先延ばしになって間が空くと、顧客の契約へのモチベーションは下がります。ブランクが長くなるほど顧客の熱は冷め、商談自体を忘れられてしまうかもしれません。また、顧客が迷っているあいだに競合他社からアプローチを受け、あっさりそちらと契約してしまう場合もあるでしょう。
営業活動では、まずリードを獲得し、商談の機会を得るまでが難しいもの。せっかく漕ぎつけた商談のプロセスでも、リサーチ、ヒアリング、見積もり、プレゼンと、多くのリソースを費やします。クロージングで失敗し、契約に至らなければ、こういった苦労がすべて水の泡となってしまうのです。
また、しっかりクロージングを行わないことで、断る理由がわからないというデメリットもあります。商品やサービスの魅力が伝わっていないのか、価格が予算と合わないのか、関心はあっても時期が早いだけなのか。理由がわからなければ再提案はもとより、別の商談に活かすこともできません。
クロージングのスキル・テクニック
クロージングとは、強引に売り込むことではなく、顧客の不安や疑問を解消し、決断のきっかけを与えることです。そこに至るまでに顧客の課題をヒアリングできていて、商品やサービスの魅力をしっかり伝えられていれば、クロージングは難しいことではありません。
あとは、クロージングに役立つスキルやテクニックを押さえ、商談の成約率を上げましょう。ここでは、クロージングで使えるスキルやテクニックをご紹介します。
クロージングのタイミングを図る
クロージングでまず重要なのはタイミングです。顧客が契約に意欲的なタイミングを逸すると、再び契約を検討するターンが始まります。しかし、まだ疑問や不安が残る段階で無理にクロージングを行うと、購入意欲を削いでしまうかもしれません。
そのために把握しておきたい情報として、「BANT条件」があります。BANTはBudget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の頭文字を取ったもので、とくにBtoB営業では押さえておくべき情報とされています。この4つの条件がそろったときがクロージングのタイミングであり、それまでの商談プロセスで聞き出しておかなければなりません。
テストクロージングを行う
テストクロージングは、契約前に顧客に購入の意志を確認するアプローチで、最終的なクロージングに必要な状態を整えるために行います。
「条件が合うようでしたら、契約を考えていただけますか?」「契約前に知っておきたいことや疑問点はありますか?」などの質問で、商談中に意思を確かめます。テストクロージングによって顧客の懸念するポイントがわかり、契約意思にない顧客との商談が長引くことを避けられるでしょう。
テストクロージングを行うタイミングは、商品やサービスの説明前や後です。説明前にどのような条件がそろっていれば契約するのか確認することで商談の進め方がわかり、説明後に契約にあたっての不安や疑問を聞いておくことで、具体的に解消すべき課題がわかるようになります。
選択肢を与える
契約の際に顧客に幅広い選択肢を与えることで、主導権があるように感じさせられます。商品やプランをすすめるだけでは、顧客は営業担当者に丸め込まれているように感じる場合もあるでしょう。クロージングは決断を迫ることでもありますから、伝え方によっては不快に思う人もいます。
「自分で選んだ」という感覚があれば、より納得感を持って契約してもらえます。その場合は、契約してもらいたい商材を含め、できれば3つのプランを用意するのが望ましいでしょう。ひとつの商品やサービスを契約する・しないという二択ではなく、価格が異なるものやサービス内容が違うものなどを用意し、その中から顧客に「選ぶ」意識を持ってもらうことが目的です。
オプションが選べる、カスタマイズができる場合も同様の効果があります。選択肢は、自社の商品・サービスに限りません。顧客には、そもそも契約しない選択肢や、同業他社の商品・サービスを利用する選択肢もあることを理解し、ベストな提案をしてください。
ドア・イン・ザ・フェイスを使う
「ドア・イン・ザ・フェイス」は、最初に過大な要求を提示し、相手に断られたところで元々本命として考えていた要求を示し、承諾を得るテクニックです。これは、一度相手に借りができると申し訳ない気持ちになり、それに応えようとする人間心理を応用したもの。クロージングの際に一番価格の高い消費やサービスをすすめてから、顧客が難色を示した際にメインの手頃な商材をすすめると、成約しやすくなります。
例えば、「フルカスタマイズすると300万円です」という提案に対し、顧客が費用面で難色を示したら、「最低限の機能に絞って100万円のプランでスモールスタートしましょう」といった例が挙げられます。ポイントは、最初の要求を高くしすぎないこと、次の要求まで間を開けないことです。
ただし、ドア・イン・ザ・フェイスは、顧客に合わない商品やサービスをすすめるテクニックではないことに注意してください。それまでの商談プロセスでヒアリングした内容から、顧客にとって最適なものを提案することが何より重要です。
契約前提で仮の話をする
商品やサービスを契約した前提で話を進めるのも、クロージングでは有効です。これは、推定承諾話法というテクニックで、契約を前提とした質問をすると、顧客は具体的にどう利用するかをイメージします。質問内容としては、「仮にご契約いただいた場合、使用するのはどなたですか?」「もし契約したら、どのオプションが必要でしょうか?」「使い始めるとしたら、いつがいいですか?」などが挙げられます。
人は、使い方がイメージできないものに手を出そうとは考えにくいものですが、具体的なイメージができれば、決断のフェーズに移行するでしょう。「こういうカスタマイズができたらいいけど、費用面がね」「来期までに導入したいけど、それまでに承認が下りるかな」など、顧客の答えによって、より適した提案や代案を出せる可能性もあります。 顧客の意向を尊重せず、独りよがりに話を先に進めれば反感を買うこともあるため、注意が必要です。
オンライン営業におけるクロージング
外出自粛やリモートワークの普及によって、オンライン営業を行う企業が増えました。Web会議ツールを利用したオンライン営業で、クロージングに苦慮する営業担当者も多いようです。
オンライン営業でも、商談プロセスやクロージングのテクニックは大きく変わりません。ただし、対面ではないことで微妙な表情や言葉のニュアンスがつかみづらく、集中力が続きにくいという特徴があります。
オンライン商談を成功させるためには、事前準備が何より重要です。短い時間で的確にニーズをつかみ、不安や疑問を解消しなければなりません。また、画面越しで説明が伝わりづらいことを見越して、わかりやすい資料を用意することも必要です。
とくに、BtoB営業の場合、商談だけでなく顧客の社内でもオンライン上のコミュニケーションが増えます。顧客が社内で何度もやりとりをするうちに、契約のモチベーションが下がるおそれもあるでしょう。決裁のフローを把握し、なぜ契約すべきか、どのようなメリットがあるのかをしっかり伝え、契約に至るまで担当者と伴走するつもりで、資料の準備などを行ってください。
クロージングで成約率を上げよう
クロージングには、さまざまなテクニックがあります。しかし、最も重要なのは、顧客・商品やサービス・状況に合った提案を行うことです。顧客にとって本当に有用であれば、そしてそれが顧客に伝わっていれば、決断のちょっとしたきっかけを与えるだけで、成約率は上がるはずです。恐れずクロージングを行って、商談の成約率を上げましょう。