ゴールは顧客を起点とした組織全体営業
VUCA時代の営業改革の一環として、各企業がさまざまなITを導入しているが「多くが落とし穴にはまっている」と長田氏は指摘する。システムの導入が増えることで、ユーザー側である営業担当者には「システム導入=仕事が増える」という認識さえ生じているという。
たとえば、「せっかく名刺管理ソフトを導入しても、スキャニングはするが単なる名刺データ、電子データのバケツ状態になっていて、現場で使われていない」(長田氏)。その結果「ITバラバラ問題」が発生し、せっかく投資をしても営業力強化につながらない。そこで、それらの問題を解決するためには「営業DX基盤」が必要というのが同社のアプローチである。
求められる要件は、IT基盤としての側面から見ると、既存のITシステムやクラウドサービスとの相互連携するハブとして機能するもの。これによってユーザーは営業に関連する社内のIT資産をワンストップで活用できるようになり、「ITバラバラ問題」は解決される。DX基盤という視点では、営業部門だけでなく組織戦で連携プレーを行うための基盤として機能するもの。顧客接点を持つすべての部門が商談内容、競合情報、成功事例、過去の売上実績、クレーム内容などすべての情報を共有、顧客を起点とした組織全体営業を可能とするデータ活用の仕組みが必要だ。
そのうえで現状では、コロナ禍での営業課題への対策も考える必要がある。たとえばテレワーク時の営業では、対面活動ができないことに加え、上司のマネジメント、チームワークやコミュニケーション、情報漏洩など多くの問題がある。社内のウェブ会議の際にも、共有している資料がExcelだけでは補足説明が必要となり、作戦会議を行うべき場が単なる報告会議になってしまう。
Sales Tech活用のゴールは業績の達成であり、そのためにアウトプットとなる成果や売上を高めていくことを考えなければならない。しかし、生産性向上のためにはそれ以外にも、情報のインプットにかかる労働時間やコストを削減するという要素も絡んでくるため、それらについても考慮しなければならない。
限られたリソースの中で求められる営業DX基盤について長田氏は、「新規顧客や案件の開拓、既存顧客の維持ないし拡大営業をいかにSales Techを使って改善・解決していくか。いかに組織戦で情報を集約しながら、チームプレーで仕事ができるようにするか。どのように事務作業を軽減して業務の効率化に寄与するか。その全体感を掴めるような仕組みでなければならない」と説明する。