不確実な時代に稼ぐ力として期待されるSales Tech
ソフトブレーンは、国内における営業プロセスマネジメントの先駆け的存在であり、同社の営業支援システム「eセールスマネージャー」は国産ベンダーとしてトップシェアを誇る。コンサルやトレーニングも含めると、これまで7,000社以上と共に営業課題の解決に取り組んできた実績があり、長田氏自身は営業担当役員およびコンサルタントとしてこれまで約3万人と営業に関するディスカッションを重ねてきたという。
それらの活動を背景に長田氏は、現在の日本企業が抱えている課題を各種調査データも交えて紹介。国内での労働人口が確実に減少していくなかで、日本能率協会の経営者に対するアンケートでは「収益性向上」と「売上・シェア拡大」が経営課題の上位2項目に挙がっていることを示し、「働く人が減っても売上やシェアを伸ばさなければいけない。まさに稼ぐ力に対してSales Techがどのように寄与すべきかが重要な局面に入っている」と解説する。
また、ITRが実施した情報システム責任者へのアンケートでも、今後重要視するIT戦略テーマの1位が3年連続で「売上増大への直接的な貢献」であることを受け、今後ITを活用してどのように稼ぐ力を身につけるかが重要なテーマになっていると、Sales Tech導入の必然性を強調する。
市場を取り巻く状況について長田氏は、「VUCA(ブーカ)」という表現がまさにあてはまると説明する。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなげたビジネス用語である。
ITが急速に発展している現在、顧客ニーズの変動が顕著であり、不確実性が大きい状況で売上計画などのビジネス上の見通しを立てることが難しくなっている。製品も多機能であれば売れる時代ではなく、ビジネスもプロダクトアウトの時代から複雑化している。急速な変化や生じる課題に対する絶対的な解決策が見つからない曖昧な状況が続いているのだ。
「VUCA時代を攻略するためには、事実(データ)と組織戦が鍵を握るというのがソフトブレーンの考え方です」(長田氏)
ゴールは顧客を起点とした組織全体営業
VUCA時代の営業改革の一環として、各企業がさまざまなITを導入しているが「多くが落とし穴にはまっている」と長田氏は指摘する。システムの導入が増えることで、ユーザー側である営業担当者には「システム導入=仕事が増える」という認識さえ生じているという。
たとえば、「せっかく名刺管理ソフトを導入しても、スキャニングはするが単なる名刺データ、電子データのバケツ状態になっていて、現場で使われていない」(長田氏)。その結果「ITバラバラ問題」が発生し、せっかく投資をしても営業力強化につながらない。そこで、それらの問題を解決するためには「営業DX基盤」が必要というのが同社のアプローチである。
求められる要件は、IT基盤としての側面から見ると、既存のITシステムやクラウドサービスとの相互連携するハブとして機能するもの。これによってユーザーは営業に関連する社内のIT資産をワンストップで活用できるようになり、「ITバラバラ問題」は解決される。DX基盤という視点では、営業部門だけでなく組織戦で連携プレーを行うための基盤として機能するもの。顧客接点を持つすべての部門が商談内容、競合情報、成功事例、過去の売上実績、クレーム内容などすべての情報を共有、顧客を起点とした組織全体営業を可能とするデータ活用の仕組みが必要だ。
そのうえで現状では、コロナ禍での営業課題への対策も考える必要がある。たとえばテレワーク時の営業では、対面活動ができないことに加え、上司のマネジメント、チームワークやコミュニケーション、情報漏洩など多くの問題がある。社内のウェブ会議の際にも、共有している資料がExcelだけでは補足説明が必要となり、作戦会議を行うべき場が単なる報告会議になってしまう。
Sales Tech活用のゴールは業績の達成であり、そのためにアウトプットとなる成果や売上を高めていくことを考えなければならない。しかし、生産性向上のためにはそれ以外にも、情報のインプットにかかる労働時間やコストを削減するという要素も絡んでくるため、それらについても考慮しなければならない。
限られたリソースの中で求められる営業DX基盤について長田氏は、「新規顧客や案件の開拓、既存顧客の維持ないし拡大営業をいかにSales Techを使って改善・解決していくか。いかに組織戦で情報を集約しながら、チームプレーで仕事ができるようにするか。どのように事務作業を軽減して業務の効率化に寄与するか。その全体感を掴めるような仕組みでなければならない」と説明する。
さまざまな支援機能を備える営業DX基盤「eセールスマネージャー」
これをシステム視点で見た場合、つまり「今後の労働人口減少社会でも営業DX改革を推進し、競合優位性のある強い営業組織を目指す」というゴールに対して必要となる機能は、「新規開拓」「既存維持」「情報の集約」「業務効率化」となる。これらを実現するための仕組みを備えているのがeセールスマネージャーであり、同製品では5つの機能の中でそれらを提供している。
まずは「顧客カルテの構築」、つまり全社的な顧客情報共有の仕組みである。eセールスマネージャーでは、営業担当者が活動報告をスマートフォンで一度入力するだけで、自動的に顧客カルテに更新がかかる。顧客カルテは基幹システムの販売実績や売上実績データと連携しており、営業担当は活動報告、コールセンターやアシスタントは顧客からの問い合わせやクレーム内容、名刺はスキャナやスマホで画像を撮って入れるだけで情報が集約され、過去の実績や案件実績といったあらゆる情報を共有できるようになる。
ダッシュボード画面では、訪問期間が空いている顧客が色分けで可視化される機能、保守や更新の1ヵ月前にアラートが表示されるなどの機能を備える。また、名刺情報をもとに誰がキーマンか、どんな商談内容を重ねてきたかを過去の背景も含めて把握できる。これらの情報を複数部門で共有することで顧客対応が早まり、顧客満足度も上がる。
さらに、人脈マップで決裁者や自社の味方が誰であるかもわかる。顧客にアポをとる際には、その企業の決裁者に同席してもらうよう味方の担当者に動いてもらうなどの訪問戦略を立てることもできる。
ふたつめの機能は、「マネジメントの可視化」で、これはコロナ禍でも組織でのチームプレーを可能とするための仕組みである。顧客情報をもとに行くべき企業をランク分けし、目標から逆算してどの顧客を訪問すれば計画達成に近づくのか訪問計画を管理できる。
業績管理では、予算達成見込みがグラフ化されるだけでなく、危うい場合は見込み顧客のターゲットリストを表示し、該当案件や人脈マップ、過去の商談履歴を上司が確認し、重要な顧客に対して自らが出向くと判断し、社内SNSのメッセージ機能で担当者にアポイントを取るように指示を出せる。
「Excelから集計が自動化されるだけでは50点。もう50点は、このような事実を掴んで連携の指示まで出し、次のプランに落とし込むというオペレーション」(長田氏)であり、eセールスマネージャーでは、これを1~2分で実施できる。これにより、報告会議に陥りがちな営業会議が作戦会議として機能するようになる。会議時には商談の進捗状況に加え、前回会議からの前進・後退の状況が可視化され、明確に危ない案件は作戦会議でフォローできる。
3つめの機能は、「営業の標準化、営業タイミングの自動化」。たとえば日報型のシステムでは上司に文章で報告を送るが、「毎回一過性で、人によって書く内容もバラバラ。このような報告だとメリットが少ない」(長田氏)。eセールスマネージャーは、スマートフォンでのタップ入力をベースに日報を作成する仕組みで、報告に必要な情報の入力をどこからでも行うことができるため、報告を習慣化できる。また、ルールエンジンをもとに「Aランク顧客なのに90日以上未訪問のリスト」「予算時期1ヵ月前のリスト」など、ビジネスチャンスが目の前にあるタイミングで自動的に教えてくれる商談リストアップ機能も備わる。
4つめは、「営業報告から各部門へリアルタイムに共有」する機能。これにより、組織間のスピーディーな連携を実現し、対応力が強化する。営業担当者が活動報告をしたら、上司のみならず、品質管理や生産、開発などのさまざまな部門に情報が連携される。これにより、クレーム対応の際などに、都度情報を申し送りしなくても組織間プレーをスムーズに行うことができるようになる。
「最後は、営業の入力は1箇所のみ、集計は自動化されるという仕組みです。かんたんでなければ営業にとっての武器になりません。1箇所への入力ですべてのレポートに自動反映する仕組みは、営業DX基盤において非常に重要なポイントです」(長田氏)。
そのほかに、ルート型セールスやエリア型セールスを支援する、しばらく訪問していない顧客リストおよび活動履歴、キーマンなどを表示する情報武装機能も備えており、これらの時間を有効に活用する機能群によって直行直帰、残業削減、テレワークが可能になる。
長田氏は、今後の展望として次のように述べ講演を締めくくった。
「労働人口減少社会においても、強い組織をつくっていくためにSales Techを活用し、営業担当者にどのような武器を持たせるのか。この基盤づくりにユーザーの皆様と一緒に取り組んでいきたいと考えています。さまざまなお客様の成功事例も持ち合わせています。皆様とディスカッションができることを期待しています」(長田氏)