米国Salesforce(以下、Salesforce)は、Salesforce初の完全自律型AIエージェントである「Einstein Service Agent」を発表した。従来のチャットボットに先行するEinstein Service Agentは、事前にプログラムされたシナリオなしで幅広いサービスの問題を理解してアクションを実行する機能を備えている。これにより、カスタマーサービスが効率的になる。
Einstein Service Agentは、明示的にプログラムされた特定のクエリだけでなく、コンテキストやニュアンスも理解する。Einstein 1 Platform上に構築されたEinstein Service Agentは、顧客のメッセージの文脈全体を分析し、大規模言語モデル (LLM) と連携することで、次に取るべきアクションを自律的に決定。生成AIを活用し、Salesforce CRMデータを含む企業のビジネスデータに基づいて会話型式で応答を生成する。
さらに、企業のブランドボイス、トーン、ガイドラインに合わせて数回のクリックでカスタマイズが可能。これにより、サービス組織は生産性の低下を招く煩雑な問い合わせから解放され、従業員が必要なタスクにより集中できるようになる。また顧客にとっては、オペレーターによる人的対応を待つ必要がなくなり、より迅速に回答を得ることができる。
Einstein Service Agentは、24時間365日体制で顧客と自然言語でコミュニケーションを取り、セルフサービスポータルやメッセージングチャネルを通じて対応する。さらに、Einstein 1 Platformを使用して企業が定義する明確なガードレール内でタスクを実行する。また、より複雑性の高い対応が必要な問題が発生した場合、企業が設定したパラメーターに基づき、オペレーターに引き継ぎを行う。
Einstein Service Agentは現在パイロット段階にあり、2024年後半に一般提供が予定されている。ユーザーフレンドリーなインターフェース、事前に作成されたテンプレート、ローコードのアクションとワークフローを備えており、スピーディーな設定が可能になる。
Salesforce Service Cloud EVP 兼 GM、キシャン・チェタン(Kishan Chetan)氏のコメント
Salesforceは、人間とデジタルのエージェントが協力して顧客体験を向上させる未来を実現しています。当社初の完全自律型AIエージェントであるEinstein Service Agentは、サービス業務を単独で完了するだけでなく、人間の担当者の働き方を拡張し、サービスチームの運営方法を完全に変革することで、チームの効率と生産性を大幅に向上します。私たちは今まさに、AI時代の顧客サービスを再構築しているのです。
重要な理由:調査によると、現在ほとんどの企業でチャットボットが使用されているが、顧客の81%は、現行のチャットボットは期待に応えておらず不満につながることがあるため、オペレーターとの対話を待ちたいと考えている。一方で、顧客の61%は単純な問題の解決にはセルフサービスを使用したいと回答しており、これは、生成AIを搭載したよりインテリジェントで自律的なエージェントを提供する機会と必要性を示している。
新機能の詳細
推論と自然な応答:Einstein Service Agentは、顧客とのスムーズでインテリジェントな会話を可能にする。推論エンジンを使用して情報を解釈および処理し、顧客に回答を提供し、問題を解決する。この推論エンジンは、LLMと連携しているため、顧客が入力する情報の文脈全体を分析して顧客の意図を理解する。そして、データから論理的な推論を行い、さまざまな情報を関連づけて、最適なアクションを決定する。Einstein Service Agentは、これらのアクションを実行し、生成AIを使用して、企業のブランドボイス、トーン、ガイドラインに沿った応答を作成する。
たとえば、顧客が最近購入した靴を返品するためにオンラインのシューズ店にアクセスした場合、Salesforce Data Cloudを使用したEinstein Service Agentには、製品の詳細、購入履歴、顧客の好み、保証、在庫情報など、返品に対して自律的に対応するために必要なすべての顧客データとビジネスデータがある。その情報を使用して、Einstein Service Agentは自動的に返品を処理し、最初から最後まで顧客とコミュニケーションを取り、顧客の満足度を測定するためにフォローアップ調査を送信することもできる。
データに基づく24時間365日の解決:Einstein Service Agentは、Salesforce CRMデータを含む企業ビジネスデータに基づいて応答する。企業は、Data CloudとUnified Knowledgeを使用して、SharePoint、Confluence、Google Drive、企業のウェブサイトやファイルなどのサードパーティシステムからのデータとナレッジを統合することもできる。これにより、Einstein Service Agentは、顧客の特定のニーズと好みに合わせてパーソナライズされた応答を生成できる。
たとえば、通信事業者の顧客が新しい携帯電話を探している場合、Einstein Service Agentは、幅広いデータ (顧客の購入履歴、データの使用状況、ウェブ閲覧活動、過去のサービスとのやり取り、マーケティングエンゲージメント、企業の製品カタログと在庫) に基づいた生成AI応答を使用して、パーソナライズされたお薦めを提供する。
組み込みのガードレール:Einstein Service AgentはEinstein 1 Platform上に構築されており、Einstein Trust Layerを使用して、個人を特定できる情報 (PII) のマスキングや、Einstein Service Agentが従うべき明確なパラメーターやガードレールの定義などの機能を実行する。
素早い設定:Einstein Service Agentは、即座に使用できるテンプレート、Salesforceコンポーネント、LLMを使用して起動できる。企業は、フロー、Apexコード、プロンプトなど既存のSalesforceオブジェクトを再利用して、Einstein Service Agentにスキルを装備できる。また、ローコードビルダーと自然言語の命令を使用してビジネスニーズに固有のカスタムアクションを作成して、時間とコストを節約することもできる。
クロスチャネルとマルチモーダルイノベーション:Einstein Service Agentは、WhatsApp、Apple Messages for Business、Facebook Messenger、SMSなどのセルフサービスポータルやメッセージングチャネルを通じて、顧客を支援できる。Einstein Service Agentによってテキスト、画像、ビデオ、音声の理解が可能なため、顧客は、問題を言葉で説明することが困難な場合に写真を送信できる。
たとえば、製造会社の顧客が最近購入した機器に問題が発生した場合、Einstein Service Agentは製品情報を検索し、そのユーザーに合わせてカスタマイズされたトラブルシューティング手順を自動的に送信できる。手順がうまくいかない場合、顧客は表示されているエラーコードの画像をアップロードできる。Einstein Service Agentはその画像を分析し、交換ユニットの送付が妥当かどうかを判断する。また、より機能が充実したユニットを推奨し、顧客にアップセルの提案を行うこともできる。
オペレーターへのシームレスな引き継ぎ:問い合わせがトピックからはずれていたり、Einstein Service Agentの対応範囲外であった場合、Service Cloudを使用して会話をオペレーターに転送する。オペレーターは会話の全文脈を把握し、顧客に繰り返し説明を求めることなく、Einstein Service Agentが中断した場所から対応を再開できる。
たとえば、損害に見舞われた顧客に人的ケアを提供する生命保険会社であれば、Einstein Service Agentが、「損害」または「死亡」に関連する言語や感情を検出した場合、それをオペレーターにエスカレートすることができる。または、ロイヤルティの高い顧客が購入後32日以内に購入したジャケットの返品を希望しているものの、店舗のポリシーでは最初の30日以内にしか返品できない場合、Einstein Service Agentは人間の同僚に例外対応を提案することもできる。