セールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce)は、「2023年版 接続性ベンチマークレポート」の日本語版を発表した。
調査結果
各部門のリーダーによる投資が、IT部門のデリバリーを改善
企業の平均IT投資額は1,170万ドル(約16億円)にまで増加。一方、今年、事業部門からリクエストされたプロジェクトのすべてを計画どおりに完了できたIT部門が増加している。
- ITインフラストラクチャの合理化が進み、自社のITインフラに手を加えることが難しいと感じている企業が減少。「変更を加えるのが難しい」と回答したのは54%(昨年は74%)、「新しいテクノロジーを導入するのは難しい」と回答したのは54%(昨年は70%)という結果になった。
- 48%の回答者が「リクエストされたすべてのプロジェクトを予定どおりに完了させた」と回答。昨年の44%から増加した。
- この1年間、企業は1,170万ドル(約16億円)をITスタッフに投資。78%の企業が「IT予算は今後も増え続けるだろう」と予想した。
DXに失敗した場合のコスト
企業がDXイニシアティブを完了できなければ、一企業あたりの損失額の平均は950万ドル(約13億円)になると予測されている。
- カスタマーエクスペリエンス(CX)がビジネスの成功にとって重要な指標のひとつになった。現在、顧客との接点の72%がデジタル化されている。
- 69%の企業が「予想以上に速いスピードで自社のDXが進んでいる」と回答。「DX の進捗が予想よりも遅れている」と回答した企業は10%となった。
- DXイニシアティブに失敗したときのコストが増加。失敗したときの損失額は950万ドル(約13億円)と予想されており、昨年の予想金額680万ドル(約9億円)から増加した。
インテグレーションの課題が解決されないまま、アプリケーションの数が増加
企業が使用するアプリケーションの数は、976個(2022年)から1,061個へと増加。既存の ITエコシステムをそのままにアプリケーションを追加しようとすると、インテグレーションの課題が生じ、DX進展の障壁が高まると予想される。カスタム型のインテグレーション(いわゆる手組み開発)でこれらの課題解決をしようとすると、年当たり470万ドル(約6.3億円)の追加支出が必要になる。
- 企業は平均1,061個のアプリケーションを使用しており、その数は増加し続けている。これらのアプリケーションのうち、ほかのシステムやプラットフォームと統合されているのは29%という結果になった。
- 企業は、直近の1年間で、カスタムコーディングによるインテグレーションに平均 470万ドル(約6.3億円)を投資。昨年の360万ドル(約4.9億円)から増加した。
- 80%の組織にとって、インテグレーションがDXの障壁となっていると回答。この割合は、「DXの進捗が予想より遅れている」と回答した企業では90%となった。
コネクテッドエクスペリエンスは、顧客にとってあたり前
36%の企業は「すべてのチャネルで完全にコネクテッドなユーザーエクスペリエンス(UX)を提供している」と回答(昨年は30%)。一方、多くの企業がUXインテグレーションを課題としている。
- 54%の企業が、エンドユーザーエクスペリエンスのインテグレーションは難しいと回答。この割合は、「DXが当初予想よりも遅れている」と感じている企業では74%となった。
- 36%の企業が、すべてのチャネルで「完全にコネクテッドなユーザーエクスペリエンスを提供できている」と回答。昨年の30%から増加した。
ユーザーエクスペリエンスの統合により実現できること
- カスタマーエンゲージメントの向上(56%)
- オペレーションの見える化(53%)
- イノベーションのサポートの実現(51%)
多くの事業部門が自動化ソリューションを必要としている
多くのIT部門は、自動化プロセスを中央で管理(67%)かつモニタリング(59%)を実施。IT以外の非エンジニア系部門からも自動化の導入を求める声が大きくなっており、ノーコードの自動化ソリューションが注目されている。
- すべての業種業態においてRPAの導入が進んでおり、33%の企業がRPAへの投資を計画。2年前の13%から20ポイント増加した。
- 自動化においてIT部門が担っている主な責任とは、集中的な管理(67%)とモニタリング(59%)。
- データ分析(64%)、製品(62%)、業務分析(61%)など、IT以外の多くの職種や部署が、その業務の効率的な遂行のために自動化を必要としている。
APIはコスト削減と収益最大化に貢献
APIは開発を合理化し、収益の38%を創出。DXの進捗が予想よりも速く進んでいる企業の93%が、明確なAPIインテグレーション戦略を有している。
- 企業の99%が、パブリックAPI/プライベートAPIを使用。もっともよく使われるのは、「新しいプロジェクトのプロセス開発」「インテグレーション」(同率53%)となった。
- 56%の企業が「非エンジニア系のビジネスユーザーがアプリケーションやデータソースを簡単に統合できるような、完成度の高いAPI戦略を持っている」と回答。
- 52%の企業が「APIがセルフサービスITの機能を支えている」と回答。2018年の35%から毎年増加している。
MuleSoft CTO マット・マクラーティ氏のコメント
当社では、デジタルトランスフォーメーションを目指す企業が多額の投資を行い、献身的に尽力している姿を目の当たりにしてきました。不透明な経済情勢の中でも、DXの取り組みは順調に進んでおり、スピードアップしている企業もあります。一方で、インテグレーションの取り組みは遅れており、これなしではデータとアプリケーションの機能を存分に活かしきることはできません。
調査概要
第8回接続性ベンチマーク年次調査
MuleSoft事業の一環として、世界的な企業のITリーダー1,050人を対象に、Vanson Bourneと共同で実施された。企業がデジタルトランスフォーメーションによって実際にどれだけの価値を得ているかを明らかにし、デジタルトランスフォーメーションの目標を達成するために、ITリーダーのもっとも成功した戦略を解明することを目的とする。
このオンライン調査は、2022年10月から2022年11月にかけて、アメリカ、英国、フランス、ドイツ、オランダ、オーストラリア、シンガポール、香港、日本で実施された。すべての回答者は、従業員1,000人以上の官民の企業組織に勤務し、IT部門の管理職以上の役職に就いている。