アドバンテッジリスクマネジメントは、同社のメールマガジン会員を対象に、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)施行1年めを振り返るにあたって企業実態に関する調査を実施した。
調査結果サマリー
- パワハラ防止策の取り組みのうち、もっとも実施しているのは「相談窓口の設置」。法施行済み企業は9割を超え(93.4%)、法施行前企業であっても7割を超えていた(74.4%)
- 相談窓口への相談件数について、法施行済み企業は、法施行前企業と比較し「増えた」の回答が11.8ポイント上回る(25.8%)。「周知により相談する道筋が明確になった」という回答がある一方で、「パワハラに該当しないような案件も増えた」との回答も挙がった
- 「パワハラ防止の意識を啓発する研修、講習」は法施行時期問わず約9割が実施。一方、「コミュニケーションスキルアップについての研修」や「感情をコントロールする手法についての研修」など、根本原因にアプローチする内容は半数に満たなかった
- パワハラ問題において難しいと感じる点としてもっとも多いのは「行為者にパワハラをしている自覚がない」(53.8%)。次いで、「受け手がパワハラであると過剰にとらえてしまう」(37.2%)、「世代間ギャップがあり従業員によって認識が異なる」(36.4%)と続いた
- パワハラ防止法による影響について、法施行済み企業は半数以上が「良い影響があった」と回答(54.1%)。一方、「どちらともいえない」も4割を超えていた
調査結果
勤務先におけるパワハラ対策のお取り組み状況について、近いものをお答えください。
次に挙げるパワハラ防止策において、実施しているものをお選びください。
(「相談窓口の設置」を実施する回答者を対象に)窓口への相談件数はどうなりましたか。
「大幅に増えた」「やや増えた」と回答した人のコメント
- 相談窓口の周知、全従業員への研修を実施したことにより、「相談していいんだ」という意識につながっていると感じる。(卸売・小売/2,000~4,999名)
- 部署内・利害関係者以外に相談できる道筋が明確になったことが相談件数の増加につながっていると思う。(電気・ガス・熱供給・水道/1,000~1,999名)
- パワハラ非該当と判断されるものも含め、情報を耳にする機会が増えたことで声をあげやすい雰囲気になっているものと考える。(製造/500~999名)
- パワハラに該当する行為が理解されたため、相談する件数が増えたのではないかと考える。(その他/500~999名)
(「管理職対象の研修や講習」「一般従業員対象の研修や講習」を実施している回答者を対象に)研修や講習に関してパワハラ防止指針が規定する以下の内容について、実施されているものをすべてお答えください。
パワハラ問題においてどのような点が難しいと感じますか。上位3項目までお答えください。
パワハラ防止法は、勤務先にどのような影響がありましたか。
「良い影響があった」「おおむね良い影響があった」と回答した人のコメント
- 誰もがパワハラに対して配慮するようになり、社内の雰囲気が良くなった。(卸売・小売/2,000~4,999名)
- 強制力が高まり、管理職の意識が変わるきっかけになる。(製造/10,000名以上)
- 以前よりもパワハラによるメンタル不調者が減ったように思う。おそらく、パワハラの認知が広まったことにより、早い段階で気づき、相談できているためと思われる。(卸売・小売/2,000~4,999名)
- 施行が決まり、今後本腰を入れて対応していく方針になっている。(製造/200~499名)
「どちらでもない」と回答した人のコメント
- 研修等によりパワハラについて職員の意識が向上したと思うが、実際についての測定はできていないから。(建設/1,000~1,999名)
- 会社は法律ギリギリの方針の羅列だけで実効性がない。(農業・林業・漁業・鉱業/200~499名)
- パワハラが減ることは良いことだが、パワハラに抵触しないか委縮してコミュニケーションが希薄化するのは良いとは言えない。(建設/50名未満)
- 過剰に反応する社員が一定数いるため、いいか悪いかは、今後正しい情報を提供し続けた先に見えてくると思う。(運輸/200~499名)
調査概要
- 調査目的:パワハラに対する企業の対応状況・意識の調査
- 調査対象:同社のメールマガジン会員(企業・団体の人事労務担当者、産業保険スタッフなど)247名
- 調査時期:2021年5月21日~31日