日立製作所(以下、日立)が開発する人工知能(AI)が、このたび、株式会社QUICKの企業開示書類の解析業務に採用された。
QUICKは、証券・金融機関、個人投資家などに対し幅広く、国内外の市況や社会情勢などのマーケット情報をリアルタイムに配信するサービスを展開。これらのサービスで基幹となる企業情報の多くは、国内約3,500社の上場企業を対象に、有価証券届出書や有価証券報告書といった開示書類の記述情報を基にしている。
毎月1,000件以上もの開示書類を、専任の担当者が目視で確認し、データベースを更新するという人手による作業を中心であったため、業務の効率化と高付加価値なサービスの提供に向け、業務のシステム化を検討してきていた。
これまで、QUICKと日立は、金融庁の政策オープンラボ「有価証券報告書等の審査業務等におけるAI等利用の検討」に関する実証へ共同参画するほか、東京都国分寺市にある日立の中央研究所内に開設した「協創の森」においてアイデアソンやハッカソンを実施するなど、AI適用に向けたいくつかの検証に取り組んできた。これらの取り組みにおいて、日立の自然言語処理技術による高い精度でのデータ抽出を確認できたことから、QUICKが業務への本格適用を開始することを決定した。
今回適用される自然言語処理技術は、大量のテキストデータから文章を論理的に読み解き、企業の経営判断を支援する日立独自の人工知能「ディベート型AI」の中核技術。文章の構文パターンや表の構造から、単語間や事象間の相関関係の特定・抽出が可能なため、開示書類の中から「決算日」や「基準価格」といった約130項目の該当情報を抜き出し、データベースに登録するまでの一連の作業を自動化する。
今後、AI適用に向けてシステム化を進め、2020年5月から、投資信託の有価証券届出書と株式の有価証券報告書を対象に本格的に適用を開始。その後、債券発行登録追補書類など適用する対象書類を順次拡大していく。日立は得られた成果をもとに、ほかの金融機関や幅広い業種にも適用できる新たなAIソリューションの開発に向けて取り組んでいく。