盛り上がりを見せるSales Tech
昨今のSaaSビジネスの盛り上がりとともに、SaaSを提供するさまざまな企業が、セールスフォース・ドットコムが実践するフレームワークである「The Model」を参考にし自社でも取り入れるようになってきた。インサイドセールス、オンラインセールス、セールス・イネーブルメント……などいわゆる「従来の営業」には存在しなかった「新しい概念」の営業手法や営業組織運営のありかたが脚光を浴び、いかに生産性の高い営業活動を行うのかということの重要性も高まってきている。
また従来は「勘と根性」に頼りがちであった営業(Sales)を技術(Technology)で効率化する「Sales Tech」と呼ばれる各種ソリューションもさまざまものが登場しており、それらを活用し「データドリブンで生産性の高い営業活動を実現する」という取り組みへの関心も高まってきている(Sales Techのカオスマップなるものも登場してきている!)。ここでは営業組織、そのなかでもとくにSaaSの営業組織がSales Techをどのようにとり入れ、どのような考えかたで運用していくべきなのかについて深堀りしていきたい。
そもそも「営業」とは?SaaS営業に求められるもの
Sales Techについて深堀りする前に、そもそも「営業」とは何か?という定義について考えてみたい。
このような話題になるといわゆる「哲学論争」が勃発することがあるが、ここでは、あらゆる要素を除外し、非常にシンプルかつデジタルに考え、「営業」とは「営業の稼働時間を売上に転換すること」だと定義してみたい。より正確に言うと、営業の稼働時間の中には実質的に売上につながらない時間(たとえば経費精算を行う時間など)も含まれている。営業がつくる売上は次の式で表すことが出来る。
売上=(1)総稼働時間 × (2)実質稼働率 × (3)時間あたりの生産性(=営業力)
- (1)総稼働時間:営業の総稼働時間
- (2)実質稼働率:(1)のうち売上につながりうる時間の割合(純粋な「顧客に対する提案活動」にあてられる時間の割合)
- (3)時間あたりの生産性:(1)×(2)=純粋な営業活動にあてられる時間をいかに効率的に売上に変換できるのか。一般的にこの部分が「営業力」と呼ばれる
営業の役割は与えられた条件の中で売上を最大化することであり、議論される際は(3)の時間あたり生産性(=営業力)をいかに上げるのかということだけに注目が集まることが多いが、本質的には上記(1)~(3)の各要素について考慮し、改善していくということが売上の最大化のためには重要である。
また、SaaSはどんな分野の製品であれ、顧客の何らかの業務の「生産性向上」に貢献しようとしていると言えるため、顧客への説得力を失わないためにも、提案する営業自身が生産性の高い営業活動にこだわっていくことが大切である。
Sales Techの役割とは何か?
上記を前提とすると「良い営業」とは(1)稼働時間×(2)実質稼働率×(3)時間あたりの生産性(=営業力)の値が「平均的な営業」よりも高い、と定義することができる。また「良い営業組織」とは「良い営業」の割合が多い組織であると言うこともできるだろう。
「良い営業」になるためには「平均的な営業」よりも(1)~(3)を改善していく必要があり、さまざまなSales Techもここで活用されるべきものである。
この際に重要なのは、まず(1)~(3)の何を改善したいのかを明確化すること、そして自社の現状の立ち位置(何ができていて何ができるようになれば良いのか?)をしっかりと理解することだ。
そのため、たとえば「最近いろいろなSales Techが出てきているらしいな。どれどれ、これなんか導入したら売上が上がるんじゃないか?」といったかたちで、製品ありきでの検討を行うことには何の意味もない。
テクノロジーはあくまでも何らかの課題を解決するために存在するものであり、人の活動や意思決定をあと押ししてくれるものだ。決して「打ち出の小槌」のようなソリューションは存在しない。その点は改めてしっかりと認識する必要がある。
さて、それではそれぞれの要素についてどのようなSales Techを用いるべきなのかを具体的に述べていきたい。