0→1営業が検証すべき「3つのステップ」
この「仮説を持って売りにいく」際、何を確かめればゴールなのか、その道筋をクリアにしておくことが重要です。新規事業というと、すぐに「PMF(プロダクト・マーケット・フィット=市場に受け入れられた状態)」を目指して走り出したくなりますが、いきなりそこには到達できません。営業活動を通じて、ひとつずつ階段をのぼる必要があります。
最初の階段は、「我々が想定している顧客は実在するのか」「彼らは本当にその課題に困っているのか」を確かめること。これがCPFです。次に、「その課題に対し、我々の商品は解決策として適切か」「お金を払う価値があると感じてもらえるか」を確かめます。これがPSFです。
PMFという大きなゴールを前に立ち尽くすのではなく、まずは目の前の顧客と対話し、「課題はあるか(CPF)」「解決策は刺さるか(PSF)」を地道に潰していく。この泥臭い積み重ねこそが、事業立ち上げの最短ルートになります。
大企業の新規事業に不可欠な「Asset Fit」の検証
しかし、アセットを持つ企業の新規事業においては、これだけでは不十分です。顧客の課題が見えたあと、解決策の検証(PSF)と並行して、避けて通れないもうひとつの重要な問いがあるからです。
それは、「その市場で、自社の既存アセット(技術、ブランド、顧客基盤など)が武器として機能するか」という検証です。
もちろん、「自社の強みを使いたい」という思いが先行して、誰も欲しがらないプロダクトをつくってしまっては本末転倒です。しかし逆に、自社のアセットがまったく活かせない市場に出ていっても、身軽で小回りの効くスタートアップ企業と同じ土俵で戦うことになり、勝ち目は薄くなります。問うべきは、スタートアップ企業には模倣できない「顧客基盤」や「信用力」などが、その事業の参入障壁として機能するかどうかです。これを見極めるプロセスこそが、Asset Fitの検証なのです。
つまり、企業における0→1営業とは、単に顧客の課題を探るだけでなく、「どこの誰の、どんな課題に対してならば、自社のアセットが最強の武器になるのか」という、自社ならではの“勝ち筋”を探し当てる探索活動でもあるのです。
ここで「機能が足りないから売れない」と安易に開発へ戻ってしまうと、本質的な「誰の、何の課題を解くべきか」という議論がおざなりになります。0→1営業は、機能を売り込むのではなく、こうした課題仮説をぶつけにいく活動です。顧客が我々の提示した課題に共感し、その解決策に身を乗り出して興味を示してくれるかどうか。その熱量こそが、事業を前に進めるためのもっとも確かなシグナルとなります。
