カスタマーサクセスの組織化で直面する3つの課題
ひとりめのCSが成長した段階で組織化を進めるのが理想だが、現実はそうかんたんにはいかない。さまざまな企業にヒアリングすると、次の3つの課題を抱えていることがあまりに多い。いずれもひとりめCSが育つ前に見切り発車でCSの運用を進めていることが原因だ。
1. 顧客とカスタマーイシューレポートを共有できていない
前述したカスタマーイシューレポートを顧客と共有できていない状況ではエクスパンション(売上拡大)は極めて難しい。顧客の課題を捉えた提案をするための情報をそもそも持ち合わせていないからだ。
社内に対しても「CSがどの課題にアプローチして売上につなげたか」を示す裏づけがなく、カスタマーイシュードリブンなCSの正しい役割を浸透させることができない。
2. 社内でのCSの役割の認識にズレがある
いまだにCSを「契約後のアフターフォロー」や「クレーム対応」といった受け身な体制として捉えるビジネスパーソンは多い。この認識のズレを放置するとCSが雑務を引き受ける“社内下請け”になり、業務過多で提案ができず、顧客離れすら招く。
3. CS人員を増やせない(予算がつかない)
1や2の結果として「何をしているか見えにくい」「守りの部隊」と思われて経営陣からコストセンターとしてみなされる。人員補充がされにくく、リソース不足で圧殺される悪循環に陥ってしまう。
カスタマーイシューレポート作成のステップ
このようなCS組織が直面する課題に対し、真っ先に取り組むべきなのが「カスタマーイシューレポートの作成と運用」だ。レポートがあれば顧客とのコミュニケーションも社内メンバーや経営陣への説明もしやすくなる。ここからは具体的なステップを解説していく。
カスタマーイシューレポートとは、顧客の事業において「どこを改善すれば成果が伸びるか」を毎週特定するためのレポートだ。作成から運用までの手順はシンプルである。
1. レポートの作成手順
まずは、どの単位で数字を比較すれば顧客の事業における改善ポイントが見つかるかを定義する。
(例)
- 営業改善なら「営業担当者ごと」「獲得経路ごと」など
- 記事改善なら「記事ごと」「流入経路ごと」など
- BDR(新規開拓)の改善なら「コール担当者ごと」「コールリストごと」など
このように、比較したいグループ名をシートの左側に並べる。 次に、毎週の数字を入力するローデータ用のタブを用意し、データを入れればメインのレポートに重要指標(成約率・CVR・アポ転換率など)が自動反映される仕組みを整えておく。
2. 週次の運用サイクル
使い方は次の3ステップだ。
1.発見する: 数値に変化があったグループ(担当名・記事タイトル・リスト名等)を見つける。
2.分析する: その理由を「人」「使い方」「仕組み」などの視点をあてはめて考える。
3.実行する: 翌週すぐに着手できる“小さな改善案”をひとつ定め、実行する。
週ごとの数値に変化がなければ改善案を見直し、改善済みであれば別の指標のレポート作成へ進む。レポートはひとつに限る必要はない。切り口を複数持つほど提案機会が増え、結果として顧客のLTV向上に貢献できる。
カスタマーイシューレポートに、難解なデータ分析スキルは不要だ。これは数字の変化から気づきを得て、能動的な提案へとつなげる「週次の気づきメモ」であり、CSにとって最強の武器となるはずだ。
