AIとTier表で挑む「成功事例づくり」
CS(≒ 顧客の成功)の仕組み化もそのための組織化も、まずは「顧客単価が2倍以上になった成功事例」がなければ完成しない。
顧客単価が2倍以上の成功事例にたどり着くには、筆者の経験や肌感で顧客1社あたり大小合わせて数十〜百程度の課題解決の助言や提言を繰り返す必要がある。
当然、提案の仮説づくりには膨大なリソースを消費する。そこで活用したいのが生成AIだ。SuccessBoxではChatGPTを使った「カスタマーイシュー生成GPT」を作成し、活用している。
顧客の事業カテゴリを入力すると顧客の事業フェーズごとに発生しうるイシューの仮説、計測指標、提案ストーリーまでが複数パターン自動生成される。これにより、提案書作成の効率は劇的に向上する。
課題解決の助言や提言を誰に行うか優先順位を決める際に活用しているのが、提案すべき顧客を絞り込む「四象限マップ」と、CS対応のしやすさをマッピングした「顧客Tier表」だ。
四象限マップでまず顧客を絞り込んだうえで、Tierの高い顧客から順に、AIで生成した仮説をもとにさまざまな角度から課題解決の助言や提言をぶつけ続ける。
この泥臭いプロセスを経て、ようやく「成功事例」がひとつ、ふたつと生まれる。そして、蓄積された成功事例が「課題と解決策のストック」となり、「提案メニュー(お品書き)」として体系化される。
CSの仕組み化の第一歩は、スマートなマニュアルづくりではない。Tierの高い顧客に対して、泥臭く提案を投げ続けることにある。心が折れそうになるかもしれないが、ここを乗り越えた時にブレイクスルーが起こり、組織化への道が開けるはずだ。
【特典データについて】 深掘りしたい読者のために、OneBoxが手がけるCSのBPOサービス「SuccessBox」のサービスサイトに、本連載で紹介するフレームワークのシートデータなどを格納した。ぜひ活用してほしい。
本連載では、ひとりCSから組織化までの道のりを全6回で解説していく。
- 第1回:ひとりでカスタマーサクセスを立ち上げる方法(今回)
- 第2回:契約後3ヵ月で勝負が決まる「オンボーディング」と顧客接点設計
- 第3回:成果を最大化するKPI設計と「エクスパンション」の仕組み
- 第4回:属人化を防ぎ、効率を高める「顧客対応の仕組み化」とCRM活用
- 第5回:組織に拡張性を持たせる「人材採用・教育・評価」の設計図
- 第6回:他部門を巻き込み、会社全体で成功を実現する「部門連携とマネジメント」
