永遠の課題「質と量」に3社はどう向き合うか?
石野 現場のスピード感を落とさないようにツールの継続を判断されていることがわかりました。次に、営業の行動量と質のコントロールにおけるツールの使いかたや考えかたを教えてください。
山本 「エントリーマネジメント」という概念は外せないかなと思います。前提としてMQL、SQLの概念を取り入れ「リードの質」の定義はしっかり決めています。加えて、中途採用の即戦力で入ってくるフィールドセールスメンバーでも平均2ヵ月間は研修を受けてもらい、「提案内容の質」も自社基準で定義しています。研修で合格しないと現場には出れません。このように入口で質を定義し、やり切ることで、あとは行動量だけに集中すれば良いというのが当社の考えです。
川口 量と質は永遠の課題ですよね……。ただ、テクノロジーを活用するからには、全体の質を高め、どの営業でも同じサービスを顧客に提供できるよう質を均一化することを目指しています。そして「質を落とさず量を最大化する」ことも常に考えています。実際、新規セールスのチームは1人あたり月80以上商談をすると質が落ちるという傾向があったので、そのラインは越さないようコントロールしていますが、この80件ももっとうまくテクノロジーを活用すれば1社あたりのフォロー時間を削減できますよね。まさにいま使っているMarketo Sales Connectは無駄な電話やメールを送らずに済むものです。質を高めるために時間を短縮することは追求したいです。
西山 量と質の両立は理想ですが、そういう組織づくりは難しいです。事業フェーズによって、どちらに力を入れるべきかは変化するので量に振り切るときと質に振り切るときをつくるのが良いというのが持論です。
たとえば創業当初は、顧客からのお問い合わせに対してできるだけアポを設定し、商談を回していました。お問い合わせが400件ぐらいになるまでひたすら設定していたので、当時営業はふたりしかいなかったのですが、それぞれが1日5商談して200の商談をふたりで行っていました。この時期に量をこなしたことでどういう企業だと受注しやすいか、チャーンレートが下がるかということがわかったんです。
しかし、インサイドセールスは日中の訪問が減って早く帰宅できることもメリットだと訴求していたのに当社のふたりが遅くまで残業をしているような状況になっていました。そこで質の追及に切り替え、そのタイミングでMarketo Sales Connectを導入したんですね。顧客がメールを開封したタイミングで電話をかけて、無駄な電話をしないようアプローチするということを究極まで突き詰めたので、生産性も上がりました。
そして来月からまた一気に量のフェーズに切り替えます。なぜなら新卒が配属され始めてリソースが増えるからです。量をこなしてを経験を積んでもらい、売上も最大化していく。チームとしても過去にやってきたことなので十分に対応できます。いつでも両方できるような組織にしておくことは正しかったと思っています。
山本 川口さんがおっしゃっていた「行動量の上限」は当社もかなり意識しています。テクノロジーを使えば量が無限に増やせるわけではない。ベルフェイスを使うようになって、訪問だけのときは1日最大3商談だったのが、マックス8商談までできるようになりましたが、喉がつぶれてダメだと気づきました(笑)。上限を決めて質を保つことも大切ですよね。
石野 テクノロジーは手段ですよね。量と質、どちらにもこだわりながら、どこにテクノロジーを活用するかを考えられているからうまくいくのかなと。とくに質の向上のためにテクノロジーを使うシーンはありますか?
西山 ベルフェイスを使うと商談の録画・録音ができ、Salesforceと連携していれば動画のURLが残ります。マネージャーは電車内でその動画を見て部下にフィードバックし、質を上げることができます。マネジメントの生産性も上がりますね。
川口 録画、良いですね。あまり受注ができなくなっているメンバーがいるとして、数字を見てこの行動が弱いのだろうと予測しますし、本人も「こういうお客様が多くて」と言うので聞いてみます。それも正しいとは思いますが、意外と部下の商談を録画で見続けるとわかることもありそう。現場をすべて見ることは難しくなっていくので、テクノロジーで補いたいですね。