外部に任せるのではなく「活かす」 営業課題を解決したふたつの事例
外部リソースの活用によって成果につながった企業の多くは、単に人員を補うのではなく、社内の課題構造を見直すきっかけとして活用しています。私自身がヒアリングし、印象に残っている事例をふたつご紹介します。
例1:インサイドセールス立ち上げに伴う外部連携
あるIT企業では、営業活動が属人化し、マーケティング起点の顧客対応が後回しになっているという課題がありました。
そこで、インサイドセールスの機能の立ち上げに際して、最初から外部パートナーと連携。対応スクリプト、KPI設計、SFA連携のルール化など、営業プロセスそのものの設計から支援を受ける体制を選択しました。
外部人材をアポイント獲得だけの部隊として使うのではなく、仕組みを内製化していくための伴走者とする。このスタンスにより、社内チームが納得して使える業務フローが整い、短期間で手応えが得られました。
訪問アポイントの獲得件数は増加し、商談の質も安定。結果として、営業チームが商談以降に集中できる環境が整い、心理的負荷の軽減にもつながったと聞いています。

例2:新規事業の市場対話を外注した例
電機メーカー企業では、IoT関連の新規事業を立ち上げた際、どの業界に、どのような訴求軸でアプローチすべきかが定まらず、営業が動き出せないという課題がありました。
そこで選んだのは、3ヵ月間の短期プロジェクトとして、外部の営業代行と組んで仮説検証を行うという方法でした。受注を目標とせず、ヒアリングと提案活動を重視しながら、業界ごとの反応を見極めるための試運転として活用したのです。
KPIも、アポイントの獲得件数や受注数ではなく、どの業界でどのような反応が得られたか、どの資料やトークが刺さったかといった質的な情報を軸に評価が組み立てられました。これにより、社内だけでは得られなかった発見が蓄積され、次年度以降の営業戦略に反映できたのです。
これらの事例に共通しているのは、外部パートナーを任せる相手ではなく、補完する存在として扱っていた点です。営業フェーズごとの課題を整理し、なにを社内に残すか、どこを外部に委ねるかを明確にしていたことで、育成と成果の両立が可能になったのだと思います。
すべてを社内で賄おうとするのは、現実的ではありません。だからこそ、自社がどこに注力すべきかを明らかにしたうえで、外部とどう組むか。外注は任せるではなく「活かす」という発想で戦略を設計できるかどうかが、営業組織の強さを左右していると感じています。