社長自ら日報を入力⁉ 全社へ「情報共有」が浸透
──営業組織が抱える課題を乗り越え、営業DXを実現する第一歩として、まずは何から取り組んだのでしょうか。
まずは情報を蓄積するため、名刺情報と営業日報を入力する新たなツールを導入しました。ツール選定の際は“シンプルさ”を重視。物流業界は全体的にシステムに不慣れな人が多く、弊社も例外ではなかったため、そのような社員でもかんたんに使用できることが重要でした。
いざ導入という際には、リモートの説明会ではなく、全国の拠点へ足を運び顔を見ながら説明しました。まさに“全国行脚”して、入力の重要性やメリットを伝えて回ったんです。この取り組みはツール活用を推し進めるだけでなく、資料作成や事務処理がメインと思われていた営業企画部を、「営業支援を担う役割」として印象づけることができたと思っています。
その後もログイン率が低い方には直接電話をかけ、質問が来た際には1つひとつ回答するなど、丁寧にフォローしていきました。「入力してください」というお願いだけでは、人は動いてくれません。自分の履歴や情報把握ができること、さらに行動履歴の開示によって上司から評価を得られやすいことなど、ツール活用によって社員が受けるメリットを伝え続けました。
営業日報に対するいいね機能は、効果抜群でしたね。まずは営業企画部員が率先して「いいね」ボタンを押し、次第にほかの部員らに広がっていくことで「いいね」が活発になり、意欲につながりました。新しいツールは、マネージャーらに説得して使われるようになった訳ではなく、システムの良さや利点に気づいた若手メンバーらから浸透していったように感じています。
──今回の取り組みの成果はいかがでしょうか。
まず定量的な成果として、作業時間の削減が明らかです。たとえば、部内会議の資料はデータの画面共有で済ませられ、資料作成が不要に。以前は50時間かかっていたという名寄せ作業も短縮。事務作業時間が週1~4時間削減したという報告があがっています。
定性的な成果としては、「データを入力する」というカルチャーが醸成できたと思っています。とくに若い世代の社員は「入力した情報が活かされている」「自分が役に立っている」と実感でき、データ入力へのモチベーションが高まっているようです。
行動管理ができるという側面も成果のひとつ。1営業日報が1商談としてカウントされ、成績ではない“行動”として評価につながっているため、件数の維持に重きを置いて見てくれている支社もあります。
また、まさに「全員営業」を体現しているのが、社長をはじめとする役員層も名刺情報や営業日報を入力・共有している点です。役員層はこうした情報を開示しない企業も少なくないと聞くなかで、これは当社の特徴だと思います。役員らも含めた情報共有は効果が大きく、すでに大型案件4件が成約に至っています。