Salesforceは、デジタル労働力を生み出すプラットフォームのアップグレード版となる「Agentforce 3」を発表した。Agentforce 3は、企業がAIエージェントを拡張させるために必要な可視性と制御性を提供する。

エンタープライズでの導入が加速する中で「チームがAIエージェントの活動を把握できず、十分な速さで改善・進化させられない」という障壁が明らかになっている。Agentforce 3は、こうした課題を解決するために発表されたソリューションになる。
新たに導入された可観測性を可能にするCommand Center、プラグ&プレイでの相互運用性を可能にするModel Context Protocol(MCP)対応、価値創出までの時間を削減する100種類以上の業種別事前作成済みアクションを備えたAgentforce 3は、順調に機能しているものを拡張し、課題のある部分を修正し、可視性、制御性、スピードを持って、自律型AIの持つ可能性を引き出す。
重要な理由:昨今、AIエージェントの導入が急増している。Slackが発表した「Workflow Index」によると、AIエージェントの利用は6ヵ月間で233%増加しており、同じ期間中に、8,000社以上の企業がAgentforceを導入するためにSalesforceと契約をしている。しかし、これまで既存のAIエージェント・プラットフォームは、エンタープライズ全体に展開するために必要なツール群、ガバナンス、可観測性を十分に備えていなかった。Agentforce 3はこのギャップを解消するため、可視性、ツール統合、エンタープライズレベルの制御性を提供する。
Agentforce Command Center ― AIエージェントの監視、測定、最適化を可能にする:AIエージェントが日常業務を担い、人間であるチームメイトとの連携が深まる中で、デジタル労働力の時代に対応した可観測性レイヤーが求められている。Agentforce Command Centerはその役割を果たすものであり、AIエージェントの健全性を監視し、パフォーマンスを測定し、成果を最適化するための統合ビュー(単一画面)を提供する可観測性ソリューションである。この機能はAgentforce Studioに組み込まれており、大規模にAIエージェントを理解し改善するためのツールによって、AIエージェントのライフサイクルを完結させる。
- インタラクション全体のパターンを可視化し、AIエージェントを最適化:Command Centerは、さまざまなAIエージェントとのやりとりを分析し、特定の会話を掘り下げ、使用傾向を理解することで、タグ付けされた会話タイプに対してAIによるAgentforceの改善提案を提供する。
- エージェントの健全性を把握し、リアルタイムで対応:レイテンシー、エスカレーションの頻度、エラー率といった指標について、詳細なライブ分析が可能になる。さらに、予期しない事象が発生した際にはリアルタイムでアラートが届くため、チームはスピーディに対応し、AIエージェントを安定的に稼働させることができるようになる。
- 効果と改善点の可視化:Command Centerは、AIエージェントの導入状況、フィードバック、成功率、コスト、トピックごとのパフォーマンスなどを追跡できる詳細なダッシュボードを提供する。これにより、チームはどの取り組みが効果を上げているのか、どこに改善の余地があるのかを把握できる。
- チームがすでに使っているツール上で、AIエージェントの活動を可視化:Agentforceは、すべてのAIエージェントの活動をData Cloud上のネイティブで拡張可能なセッショントレーシングデータモデルに記録し、分析、モニタリング、リアルタイムアラートに活用する。この仕組みはOpenTelemetry標準に基づいて構築されており、Datadog、Wayfoundをはじめとするモニタリングパートナーのツールともシームレスに統合され、既存のスタック全体にわたるエンドツーエンドの可視性を実現する。
- さまざまなチームに最適化されたカスタマイズ可能なCommand Centerを提供:AIエージェントの活動を人間のチームメンバーと並行して、業務フローの中でリアルタイムにモニタリングできる。この機能は、まずService Cloudから提供を開始する。AIエージェントの活動がリアルタイムのウォールボード上に表示されることで、コンタクトセンターのスーパーバイザーがパフォーマンスを追跡し、スピーディにエスカレーションができるようになる。また今後は、さまざまな部門に対して、それぞれのAIエージェントの最適化されたCommand Centerが順次提供される予定である。
- AI支援型開発ツールでスピーディなAIエージェントの構築とテスト:Agentforce Studioでは、自然言語で入力すると、トピック、指示、テストケースを自動生成できる。さらにテストセンターでは、状態注入(コンテキスト変数や会話履歴の入力)やAIによる評価(AI-driven evals)を用いた大規模な動作シミュレーションが可能になる。これにより、本番稼働前にAIエージェントに対して負荷テストを実施し、確実な運用準備を整えることができる。
MCPおよびA2A対応によるセキュアなエンタープライズ接続:AIエージェントがインパクトを生み出すには、企業が日常的に活用しているツールを使ってアクションを実行する必要がある。Model Context Protocol(MCP)のようなオープンスタンダードの普及により、相互運用性の新たな可能性が広がる一方で、ガバナンス、ID管理、制御に関する課題も生じている。Agentforce 3は、オープンな接続性とエンタープライズレベルの信頼性を組み合わせることで、こうした課題を解決する。AIエージェントに必要なツールへネイティブなアクセスを提供しつつ、制御性が損なわれることはない。
- Agentforceにネイティブに組み込まれたMCPサポート:AgentforceにはMCPクライアントがネイティブに組み込まれ、カスタムコードなしでMCP準拠のさまざまなサーバーに、AgentforceのAIエージェントが接続できるようになる。「AI版USB Type-C」のように、企業向けのツール、プロンプト、リソースに対してシームレスにアクセスでき、既存のセキュリティポリシーのもとで管理される。
- MuleSoftでAPIをスピーディにMCPサーバーへ変換:新しいMCPコネクタを活用することで、MuleSoftはさまざまなAPIやインテグレーションを、セキュリティポリシー、アクティビティの追跡、流量制御機能を備えたAIエージェント対応のアセットへと変換する。これにより、チームはマルチエージェントによるワークフローの連携とガバナンスを実現する。
- HerokuでカスタムMCPサーバーをホスティング・管理:Heroku Managed InferenceとAppLinkを活用することで、カスタムMCPサーバーのデプロイ、登録、管理、接続を行う。HerokuのインフラとDevOps自動化機能により、開発者は信頼性のあるカスタムアクションをスムーズにAgentforceへ組み込むことができる。
AgentExchangeの拡張 :組織がチーム全体にAIエージェントを導入する中で、AgentExchangeは、パートナーが構築したエージェントアクションやテンプレートを通じて、スピーディに価値創出できるツールを整備できる仕組みを可能にする。今後、企業は30社以上のパートナーが提供するMCPサーバーを利用できるようになり、新たなサードパーティ製ツールやリソースへのアクセスが可能になる。これらのサーバーはセキュアなAIエージェントゲートウェイを介してAgentforceとシームレスに接続される。MCPローンチパートナーには、AWS、Box、Cisco、Google Cloud、IBM、Notion、PayPal、Stripe、Teradata、WRITERなどがあげられる。
Agentforceアーキテクチャの強化:Agentforce 3の新機能は、強化されたAtlasアーキテクチャが基盤となっている。このアーキテクチャは、低いレイテンシー、高い精度、グローバルでの可用性、そしてSalesforceインフラ上でホスティングされる新たなLLMによる制御オプションの拡充を通じて、エンタープライズに対応する基盤を提供する。
- AnthropicホスティングによるLLM選択肢の拡充:Agentforceは、Amazon Bedrock経由でホストされるAnthropicのClaude SonnetモデルをSalesforceの環境内で利用できるようになった。これにより、コンプライアンス要件の厳しい業界における顧客ニーズに対応できるようになる。この連携強化の一環として、AnthropicはSalesforceと協力し、規制業種の顧客がClaudeを用いてAgentforceの導入をスケールできるよう支援する。
- ストリーミング対応:2025年1月以降、レイテンシーが50%改善されたことで、Agentforceは応答性の強化を実現。レスポンスのストリーミング機能が一般提供され、ユーザーは回答がリアルタイムで生成される様子を画面上で確認できるようになった。
- ウェブ検索とインライン引用による精度向上:Agentforce 3は、ウェブ検索を新たなデータソースとして追加することで、信頼性のある拡張型グラウンディングを可能にする。AIエージェントが社内データだけでなく外部情報にもアクセスし、質問に回答ができるようになった。加えて、回答に使用した情報源へのインライン引用機能も提供され、透明性が向上した。
- 対応言語と展開地域の拡大:Agentforce 3は、グローバル展開を拡大し、カナダ、英国、インド、日本、ブラジルでの展開を通じて、各地域内でのAIエージェントのトラフィックに対応可能に。また、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、日本語、ポルトガル語の6言語が新たに一般提供され、今後数ヵ月以内に30以上の追加言語が順次展開される予定。
- 自動フェイルオーバーによるレジリエンスの強化:AIエージェントが常時稼働できるようにするため、Agentforceはレイテンシーに基づく自動フェイルオーバーを有効化した。これにより、パフォーマンス低下や障害が発生した際に、モデルプロバイダー間でトラフィックを動的に切り替えることが可能になる。
- FedRAMP High認証を取得し、公共部門向けにもAgentforceを提供:Agentforceは現在、SalesforceのGovernment Cloud Plusにおいて一般提供が開始されており、公共部門の顧客もAgentforceを導入できるようになった。これにより、信頼性、セキュリティ、コンプライアンスを確保したかたちで、行政機関のミッションにAIエージェントを活用することが可能になった。
業界対応力を標準搭載し、AIエージェントによる価値創出:さまざまな業界のAgentforceの顧客は、200種類以上の業種別に事前作成されたアクションを活用することで、AIエージェントから価値を引き出すことができるようになる。これらのうち半数は2025年夏に新たに追加予定で、患者の予約管理、広告提案書の作成、車両の整備対応などが含まれる。
専門家とともに、Agentforceを導入・拡張:Accenture、Deloitte Digital、NeuraFlash、PwCなどを含むSalesforceのパートナーエコシステムは、これまでもAgentforceの導入を支援してきた。在籍する認定スペシャリストが戦略的なガイダンスを提供し、ガバナンスを維持しながらビジネス成果を生み出すAIエージェントの導入・稼働を支援する。