お互いが正しくリクエストするために必要なこととは?
高橋 マーケティングとセールスがお互いに正しくリクエストするために、どのような工夫が必要でしょうか。
富家 組織間のコミュニケーションエラーの大半は、必要な人同士が、適切なテーマを、最適な頻度で話せていないことが要因です。そのため、ミーティングの目的や参加者、時間、頻度が適切か、見直すことが大切です。
富家 次は「顧客ターゲット」を決めること。そしてここは、マーケティングではなく、営業が本気で考えるべきだと僕は思っています。ただし割合は営業51対マーケ49。それくらいの責任案分です。
さらにターゲットを対象外かどうかふたつに分類するのではなく、「どちらでもない」に属するリードがボリュームゾーンとなることも考慮してください。もちろん、自分たちがアプローチしない層については、明確に決めたほうが良いですね。
ターゲットが決まれば、その層とどれだけ接点を持つことできているか、商談率、受注率などを可視化することで、自分たちの“現在地”がわかり、何をすべきかコミュニケーションがしやすくなります。ここまで解像度が上がるとようやく、マーケティングとして取り組みたいことを営業に正しくリクエストできるはずです。
富家 ただし人と人との間には、「理解」と「感情」と「合意」の3つの壁が存在しますので、この3つのどの壁が立ちはだかっているのかによって、越え方が変わってきます。
井田 ターゲットについて営業担当者と話すと、「印象に残っている1社」について話をされることが多いです。一方で、マーケティングとしてはそのお客様だけではなく、ターゲット企業に共通する要素を抽出していきたいですよね。そのあたりはどうやってすり合わせていますか。
富家 個人的には、営業担当者の方に語ってもらうのは記憶に残っている1社、良かった案件についてで良いと思っています。たくさんの担当者と会話してその数を集め、共通項を抜き出し落とし込むのがマーケティングの仕事という感じです。ただし、そのお客様について、どんな方でどんな課題があったのか、業界共通の問題点など、とにかく細かく聞くようにしています。
井田 なるほど。営業側にヒアリングする以外の方法だと、インサイドセールスチームの接点に私は注目していますね。最初に接点を持ってもらった時点でもいろいろな情報がキャッチできるんですよね。たとえば、「検討をしている人」と「していない人」によって出てくるワードが違うこともありますし、特定の業界における課題が変化するときなども、いちばん最初の変化にインサイドセールスが気づきやすいんです。
展示会・イベントを共に成功させるためのTips
高橋 見込み顧客と接点を持つ、展示会やウェビナーなどのイベントはマーケティングとセールスが共同で取り組むことも多いと思います。普段気をつけていることはありますか。
井田 私たちは、イベント前にキックオフを行っています。開催目的はもちろん、獲得名刺数などのKPIをはじめ、1時間あたりの名刺獲得目安数などを提示し、個々人の目的意識を高めています。1週間ほど前に実施することで営業側から出されるアイデアを本番に反映することもできますし、何より同じ気持ちで展示会やイベントに臨めています。
もうひとつ意識しているのは、イベント後に結果を報告すること。展示会を乗り越えることが目的ではなく、成果を得ることが重要ですから、どんなに疲れていても当日に速報で、名刺獲得枚数や進捗度、意識してもらいたい点などを送るようにしています。
高橋 最後に、マーケティングとセールスが連携を深めるために、おふたりからメッセージをお願いします。
富家 マーケティングには2種類あります。ひとつは事業の価値やブランド価値をつくり、事業拡大を仕掛けること。もうひとつは商談という場をつくること。成果=商談とするとわかりやすく評価しやすいですが、商談だけにスポットを当てると、事業はすぐに頭打ちになってしまいます。自社の価値を高めるには、市場を正しく理解し、自分たちのメッセージを伝えて続ける必要があります。
セールスに直接的に寄与することはもちろんですが、セールスを巻き込みながら、事業価値を創り、高めていくことも現在のマーケティングには求められているのではないかと考えています。
井田 マーケティングとセールスの壁は、ここ数年テーマになっていますが、世の中の刷り込みもありますし、結局は「気持ちの壁だけでは?」と思うこともあります。同じ会社で同じゴールに向かって仕事をしているんですから、壁なんてないはずです。今日、お伝えしたような細かいTipsを活用していただきつつ、皆さんが「壁のように感じているもの」を、ぜひ乗り越えてほしいと思います。
高橋 本日はありがとうございました!