【前回の振り返り】SFA/CRMの導入後、成果が上がらないのはなぜ?
第1回の記事「SFA/CRMの活用はなぜうまくいかないのか? 3つの課題と活用効果を高める秘訣を解説」では、SFA/CRM導入により期待できる効果を紹介し、企業が陥りやすい課題と対策について解説しました。
一定レベルの導入効果を感じている企業もある一方、活用に課題があり、思っていたほどの事業インパクトが得られていない企業も少なくありません。顧客の現状ステータスはわかっても、商談や与件、受注を増やすための活動改善につなげられず、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか?
成果が上がらない理由のひとつに、BtoB顧客の購買プロセスが大きく変化していることが挙げられます。そこで今回は、急速に変化する顧客の購買行動に対応するために、最近海外で注目を集めている「バイヤーイネーブルメント」という概念について解説したいと思います。
「バイヤーイネーブルメント」が注目されるふたつの理由
改めて、バイヤーイネーブルメントとは何かを解説します。バイヤーイネーブルメント(Buyer Enablement)とは、主に「BtoBビジネスにおける顧客が製品やサービスを効果的に評価し、購買プロセスをスムーズに進めることができるように支援する活動全般」を指す概念のことです。端的に言うと「顧客の購買プロセスをスムーズに進めるために支援する活動」です。
2018年にアメリカの調査会社Gartner社のスコット・コリンズ氏が「BtoB営業向けの4つの大きなトレンド」のひとつとして提唱したことをきっかけに、主にマーケティングやセールスに関わる業界で注目されています。
このバイヤーイネーブルメントが重要視されるようになったのには、大きくふたつの要因があると言われています。
1. BtoBバイヤーの購買プロセスが複雑化したこと
Gartner社が250人以上のBtoB顧客を対象に実施した調査「New B2B Buying Journey and Its Implication for Sales」によると、77%のBtoB顧客が自身の購買体験を「非常に複雑」または「困難」と評価しており、購買プロセスの複雑化が明らかとなりました。
この背景として、インターネットが普及したことで購買の意思決定のための情報が容易に入手できるようになった反面、無数の選択肢から最適なものを選ぶ労力や、購買を判断するために製品/サービスを深く理解するためのプロセスが追加されたことが語られています。
また同調査において、「一般的に、BtoB顧客が所属する購買部門は6〜10人で構成され、各人が4~5つの情報を収集し共有して意思決定するプロセスが採用されている」と、顧客が集める情報量の多さについて言及されています。そして「共有される新たな情報が増えるたびに、少なくとも一度は決定を見直さなければならないと感じている」と答えた人は95%にものぼっています。
これまで一方向に流れると考えられていたBtoBの購買プロセスは、「情報収集」と「比較検討」を繰り返すサイクル状のプロセスへと変わってきており、売り手側が顧客の購買プロセスを把握しづらくなっているのです。
2. BtoB顧客の中心がデジタルリテラシーが高い世代にシフトしたこと
現代のビジネスの市場において、BtoB顧客の中心はデジタルリテラシーが高い世代、いわゆるミレニアル世代にシフトしています。ミレニアル世代とは1981年〜1990年代半ばごろまでに生まれた世代のことで、彼らは購買プロセスにおいてもインターネットを主要な情報源として活用する特徴があります。
先ほどご紹介したGartner社の調査レポートによると、顧客が購買検討時間の中でBtoB商材を提供する企業側(レポートでは「サプライヤー」と表記)と直接接触している時間はわずか17%なのに対し、オンラインで情報収集に費やしている時間は27%であることがわかりました。現代のBtoB顧客は、製品やサービスに関わる情報を自分自身で調査・収集し、類似商品との比較検討を好む傾向があることがうかがえます。
このように、顧客が営業担当者に接触しないまま自律的に情報を集める動きが活発化したことで、営業担当者と顧客の間の情報格差が薄れてきています。顧客は「営業担当者が製品に対してどれだけ詳しいか」をあまり重視せず、「営業担当者が自分たちの苦悩やニーズを把握し、購入プロセスをスムーズに進める支援をしてくれるか」という、“理解者探し”の購買プロセスをとる傾向が強くなってきているのです。
購買プロセスが複雑なうえ、検討段階の顧客と直接的な接点がつくりにくい現代。BtoB商材を提供する企業側は、どのようにして顧客理解を深め、バイヤーイネーブルメントを実現すれば良いのでしょうか?
その鍵は「営業部門とマーケティング部門の連携強化」にあります。