そのひと言が逆効果!? 中途採用における「勘違い」
「終身雇用制度」が崩壊した現代、転職は一般的となりました。人手不足が続く中、多くの企業が優秀な人材を獲得しようと中途採用に取り組んでいます。しかし、いざ採用したは良いものの「期待していたほど成果を出してもらえない」と悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。採用されたメンバーも「こんなはずではなかった」と入社前のとのギャップに悩んだ末、1年足らずで退職してしまうという話も聞きます。
中途採用メンバーに即戦力として活躍してもらうためにはどうすれば良いのでしょうか。はじめに、中途採用における「よくある勘違い」をお伝えします。
よくある勘違い(1) これまでの「経歴」で成果を期待する
皆さんは次のように考えたことはありませんか?
「同業他社でトップセールスとして活躍していた人材が入社する。その経験を活かして、課の仕組みを変えてもらおう」
「業界トップの企業で営業していた人材なら、自社の営業組織でも即戦力として活躍してくれるはずだ」
しかしいざ蓋を開けてみたら、売上が伸びない、組織を牽引できないなど、期待していたほど成果が出ない。これはよくあるケースだと思います。このような期待と実態のギャップが生じてしまうのは、「経歴が素晴らしい=自社でもきっと素晴らしい成果を挙げてくれる」と安易に期待してしまうことが要因です。
当然のことですが、採用するのは“経歴”ではなく“人”です。どれほど素晴らしい経歴でも、自社でも成果を出せるかどうかは判断できません。「高学歴な人は使えない」「大企業出身者は即戦力にならない」といった考えも、経歴で個人の能力を決めつけている点では同じ。“人”ではなく“経歴”しか見ていないことになります。
経歴ではなく「本人の経験や能力をどのように自社で活かしてもらうか」をしっかりイメージし、適切な指導・フォローを行わない限り、企業にとっても中途採用メンバーにとっても残念な結果に終わってしまいます。
よくある勘違い(2) 第三者的な立場を求めてしまう
もうひとつの「よくある勘違い」が、中途採用メンバーに第三者的な立場を求めてしまうこと。中途採用メンバーに対して、次のように声をかけたことはありませんか?
「前職と比較して、自社の問題点があったら何でも指摘してほしい」
「これまでの経験を活かして、自社に新しい価値観を入れてほしい」
活躍を期待するポジティブな言葉かもしれませんが、入社した以上、中途採用メンバーはすでに自社の人間です。早く新しい環境に慣れるためには「自社のルールを守る」ことが重要。第三者的な立場で意見するよう求めてしまうと、ルールや組織の問題点を指摘することが仕事になってしまい、自社のルールを軽視するようになってしまいます。ルールを守らず指摘ばかりする中途採用メンバーを、既存メンバーは仲間(組織の一員)と認識できるでしょうか。結果、中途採用メンバーが社内で浮いた存在になってしまう可能性が高くなります。
採用担当者や営業マネージャーも、さまざまな問題点を指摘してくれる転職者を最初は評価するかもしれません。しかし本当に重要なのは「指摘」ではなく、実際に組織や仕組みを改善していく「実行力」です。ただ指摘するだけで組織の一員として溶け込めていない状況では、組織内で中途採用メンバーへの不満を募ることになります。