営業スキルは「個人」から「組織」へ
“平均以下”スキルのマネージャーが45%
──昨今の営業組織の変化について、高橋さんの所感を教えてください。
営業組織が活用できる便利なソリューションも数多く登場し、それらを使いこなせているかによって、成果の差が開いてきています。中でもインパクトが大きいのが情報共有やコミュニケーションにまつわるツール。弊社が実施した「営業1万人調査」の中で、5,000人に営業組織の実態を聞いたんですね。目標の達成段階を5段階に分け、達成率の高いツールと低いチームを比較しました。すると、目標達成率が高い人たちが効果を実感していると答えたツールが、「情報共有のデータベース」だったのです。
コロナ禍で顧客と直接会えなくなったり、顧客が営業に頼らず購買プロセスを進めることができるようになったりと、営業の難易度も上がってきています。そのため、成果を出すために、営業プロセスを分担する営業組織も増えてきました。すぐに受注とならずとも長期的にアプローチしたいお客様に対して、インサイドセールスが関係構築を行うのもそのひとつですよね。分担する際にも、今までどういう商談をしていたのか、情報の共有が大事になってきます。
昔は優れた営業パーソンが、ノウハウを共有したがらない風潮もありましたが、現在はむしろお互いの情報や取り組みを共有するメリットが相当大きくなってきたことを示した結果だと思います。
──時代の変化に関わらず成果を出している人たちは、個人スキルを磨くよりチームで取り組むほうが強くなれるという考え方に変化しているんですね。
もしも自分の会社や組織のメンバーが上手く行っていないと感じたら、こうした変化を捉えられているか、見直してみてほしいですね。マネージャーやリーダーの方が現場の最前線にいたときは、一匹狼の集団でも高い成果を出すことができたと思いますが、今はそのやり方では通用しなくなってきています。
──営業組織のあり方が変化している今、リーダーや経営層がぶつかりがちな壁はほかにもありますか。
実は、メンバーを教える立場にあるいわゆる現場のマネージャーの人たちも、どうやって成果を出せば良いかわかっていないことが多いんです。営業1万人調査によると、ハイ達成組織に所属する営業のスキル平均と、全営業マネージャーのスキル平均は同じでした。これだけ見ると、多くのマネージャーがハイ達成者と同じぐらい営業ができるように見えますよね。しかし、マネージャー側のスキル差は激しく、内訳を見ていくと「全営業」の平均以下のスキルの営業マネージャーが45%ほどいることがわかりました。
つまり、多くのマネージャーが成果を出すための正解がわからないまま、メンバーを指導しています。ですから、メンバーから「アポが取れません」と相談されても、「たくさん電話したらいいんじゃないかな」というようなアドバイスになってしまう。
背景には人手不足もあると思いますが、それよりも環境の変化によって営業の難しさが変わってきていることが大きな要因だと思います。繰り返しになりますが、マネージャーたちが昇格したころと、現在現場が直面している難しさは完全に別物だと意識する必要があるはずです。