ハラスメントの種類
そもそも、ハラスメントとはどのようなもので、どんな種類があるのでしょうか。まずは、ハラスメントの概要を確認しましょう。
ハラスメントとは
ハラスメントとは日本語で「嫌がらせ」や「いじめ」などのことを指します。ハラスメントの種類は多様化し、年々増加していますが、すべてのハラスメントに共通するのは業務を進める上で必要性のない発言や行動によって「相手を不快な気持ちにさせる」「相手に脅威を感じさせる」ことです。
ハラスメントを行っている当事者にはその意識がない、ハラスメントを受けている被害者は報復などを恐れて周囲に言い出せない、ということが往々にしてあるでしょう。ある行為がハラスメントに該当するかどうかのポイントは、「職務と関連性があるか」「業務上、必要性があるか」とともに、「度を越していないか」ということです。
たとえば、いかに業務上必要な叱責だったとしても、全従業員の面前で見せしめのように叱りつける、などは明らかに度を越しています。ほかにも、従業員のプライベートに不用意に口を出すことは職務との関連性がありませんし、重要事項を伝えない、無視をするなどの行為は業務上の必要性がないと判断されます。
会社で起こりうるハラスメント一覧
多様化するハラスメントですが、そのうち会社で起こりうるハラスメントには、以下のようなものがあります。
- パワハラ(パワーハラスメント)
- セクハラ(セクシャルハラスメント)
- マタハラ(マタニティハラスメント)
- リモハラ、テレハラ(リモートハラスメント、テレワークハラスメント)
- セカハラ(セカンドハラスメント)
- モラハラ(モラルハラスメント)
- アルハラ(アルコールハラスメント)
- ケアハラ(ケアハラスメント)
- ジェンハラ(ジェンダーハラスメント)
- リスハラ(リストラハラスメント)
- テクハラ(テクノロジーハラスメント、テクニカルハラスメント)
- テクハラ(テクスチュアルハラスメント)
- カラハラ(カラオケハラスメント)
- スモハラ(スモークハラスメント)
- ブラハラ(ブラッドタイプハラスメント)
- エレハラ(エレクトロニックハラスメント)
- エイハラ(エイジハラスメント)
- マリハラ(マリッジハラスメント)
- スメハラ(スメルハラスメント)
- エアハラ(エアーハラスメント)
- ソーハラ(ソーシャルハラスメント)
- オワハラ(就活終われハラスメント)
- パーハラ(パーソナルハラスメント)
- ラブハラ(ラブハラスメント)
- レイハラ(レイシャルハラスメント)
- ワクハラ(ワクチンハラスメント)
こんなに種類が多いと覚えきれない、と思うかもしれませんが、いずれのハラスメントも欠けているのは「相手の立場に立って思いやる」「想像力を働かせる」といったことです。想像力を働かせ、相手の立場に立って考えることができれば、こうしたハラスメントは起こりにくいでしょう。
たとえば、ブラハラやテクハラ、マリハラ、ラブハラなどは「嫌がる人もいるかもしれない」「機械が苦手な人もいるかもしれない」「結婚願望や恋愛願望が強い人ばかりとは限らない」といったことを考えられれば、少なくとも無意識に行ってしまうことは避けられるでしょう。それだけでも、ハラスメントの件数はぐっと減るはずです。
次章では、会社で起こりうるハラスメントの中でも、とくに多いハラスメントの種類について解説します。
会社に多いのはどの種類のハラスメント?
厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査報告書(令和2年度)」によれば、会社で起こりやすいハラスメントはパワハラ、セクハラに続き、マタハラなど妊娠や出産・育児休業に関するハラスメント、介護休業に関するハラスメント(ケアハラ)、就活等ハラスメント(オワハラを含むセクハラ、パワハラなど)が挙げられています。
パワハラ(パワーハラスメント)とは
パワハラとは、職場における上下関係を利用したハラスメントのことで、職務上の地位や権力などを振りかざして業務上必要な範囲を超えて精神的・身体的な苦痛を与えることを指します。一般的に上司から部下へ、先輩から後輩へといった図が多いのですが、部下から上司へ行われることもあります。
パワハラの例としては、以下のようなことが挙げられます。
- 叩く、殴る、蹴るなどの暴力
- 「馬鹿野郎」「死ね」などの暴言
- 集団で無視し、孤立させる
- ほかの従業員の目の前で叱責する
- 嫌がらせのために明らかに能力に対して過小・過大な仕事を押しつける
セクハラ(セクシャルハラスメント)とは
セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動により、従業員が労働条件で不利益を受けたり、職場環境が悪くなったり、精神的・肉体的苦痛を受けたりすることです。たとえば、前述のマリハラやラブハラなどは広義のセクハラに該当するとも言えます。男性が女性に対して行うイメージが強いのですが、「まだ結婚しないの?」としつこく聞くなど、女性同士、男性同士で行われるケースもあります。
セクハラには「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の2種類があり、次のように異なります。
- 対価型セクハラ…立場の上下関係を利用して、性的関係や言動を強要すること。
- 環境型セクハラ…性的な言動を繰り返したり、ヌードポスターなどの性的な掲示をわざと貼ったりすることで、職場環境を悪化させること。
ハラスメントというとセクハラのイメージが強かったことや、問題として取り沙汰されるケースが多かったことから、近年ではセクハラの数は減少傾向にあります。とは言え、まだまだパワハラに次いで多いハラスメントであることに変わりはありませんので、十分な対策が必要です。
マタハラなど、妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントとは
マタハラなど、妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントとは、妊娠した女性従業員に対して解雇したり、降格や減給したりといった不利益な扱いをすること、また、育児休業を申し出た従業員に対し、同様に労働条件で不利益を与えることを指します。どうしても女性が受けるイメージが強いですが、男性従業員の育児休業に対して不利益を与えることもこのハラスメントに相当します。
介護休業等ハラスメントとは
介護休業等ハラスメントとは前述のケアハラのことを指し、働きながら家族の介護をしている従業員が時短勤務などの制度を利用することに対し、嫌がらせをするなどが当てはまります。これも女性が受けると思われがちですが、男性従業員が介護休業を取得しようとした際に「男のくせに仕事を休むな」と言ったりすることもケアハラに相当します。家のことは女性がやるもの、という偏見を捨てることが重要です。
就活等ハラスメントとは
就活等ハラスメントとは、前述のオワハラのように内定と引き換えに就活を終えるよう迫ることのほか、内定を与える代わりに性的関係を迫るなどのセクハラと複合したハラスメントも含まれます。
会社ができるハラスメント対策
では、前述のようなハラスメントが起こらないように、または起こってしまった場合に会社ができる対策としてはどんなものがあるのでしょうか。
相談窓口の設置
まずは、相談窓口を設置していつでも相談や苦情を受けつけられるように整備しましょう。これは2020年6月1日に施行された「パワハラ防止法」によって義務づけられており、2022年4月からは中小企業も対象となっています。
社内研修の実施
ハラスメントについて社内研修などで周知し、ハラスメントが起こらないよう努めることも重要です。厚生労働省の資料を使って社内で研修を企画するのも良いですし、外部講師に委託する方法もあります。
専門家と連携する
相談窓口を設置したり、研修を外部講師に委託したりすることも含めて、ハラスメントの専門家と連携することも有効です。とくに、実際にハラスメントが起こってしまったときのことを考え、お近くの労働基準監督署などに相談してみると良いでしょう。
ハラスメントが起こってしまったら?
ハラスメントが起こってしまったら、大まかに以下のステップで対応します。
- 相談・苦情に対する事実関係の確認
- 事実確認に基づく判断や通知
- 事後の対応
まずは、相談や苦情を受けたら事実関係を確認しましょう。相談者、加害者、第三者のそれぞれに聞き取りを行います。その後、ハラスメントに該当するかどうか判断し、ハラスメントに該当する場合は当事者に通知を行うとともに、被害者の回復や加害者への処分や再教育を行います。当時者の配置転換や関係改善をはかるなど、健全な職場環境の回復をはかることも重要です。
ハラスメントについて知識を深め、ハラスメントを防止しよう
ハラスメントは年々多様化しているとされていますが、会社で起こる主なハラスメントの種類は限られています。まずは件数の多いハラスメントから正しく知識を身につけ、ハラスメント防止の対策を立てたり、対処のステップを準備したりしましょう。