1年半、タテ・ヨコ・ナナメに300回思いを伝える
田口(ユーザベース) 営業DXの具体的な取り組みについてうかがってきました。我々がお客様からよくご相談いただくことのひとつに、「大企業ならではの事情でDX推進がなかなかうまくいかない、時間がかかる」というものがあります。人間模様も含め、「上司の理解が得られず、心が折れそう」とおっしゃる方もいらっしゃいます。おふたりは、大企業の中でも着実にDX推進を進めていらっしゃいます。どのような苦難をどう乗り越えてきたのかうかがえますか。
友廣(富士通) 三日三晩語れます(笑)。意識統一は非常にたいへんで、生半可な気持ちでは取り組めないものです。たしかに、「富士通のインサイドセールスについて教えてほしい」と近しい大手企業の方々から相談されることは増えましたね。やはり、どの企業も既存のビジネスだけではグロースが難しいなか、「トップダウンでインサイドセールスを導入するように言われたが、どうすればわからなくてお手上げ」な人たちも多いようです。
デジタルセールスと呼んでいるインサイドセールス組織の立ち上げは、どちらかと言えばボトムアップで、自分たちのチームが、営業8,000人を動かせたらと面白いなという思いで取り組んできました。最初は箸にも棒にも掛からない、話を聞いてもらえないところからのスタートです。自分たちがやることにどんなバリューがあり、具体的にどうやりたいのかを、タテ・ヨコ・ナナメ、あらゆる階層に向け、300回ぐらい説明していきました。現場から熱量を持って伝えることと同時に、小さくても良いから成功例をつくることも重要でした。「○○の部門では、デジタルセールスとの取り組みで実際にどれくらい成績が伸びたらしい」という結果を持って、ほかのチームにも展開していきました。
概念だけを伝えていても、「SaaSベンダーが取り組んでいるThe Model? 自社には関係ないだろう」と思われてしまう。そうではなく、「当社ならではの『THE MODEL』をつくっていきましょう」と現場が困っていることに対して働きかけ、その成功例と共に伝え続けました。全社展開にはまだ遠いですが、現在かなりの部門で我々が提供するデジタルセールスとの営業活動が浸透し始めています。
田口 改革においてどれぐらいの時間軸を見ておけば良いのかと質問をいただいています。ケースバイケースだとは思うのですが、友廣さんの300回の説明含めて、どれくらいの時間をかけたのでしょうか。
友廣 1年から1年半ですね。大企業としては、すごいスピードで仲間を増やして改革が進んでいると思います。最近取り組みを話した企業さんからも「10年かけた取り組みですよね」と言われ、1年半ですとお答えしたら驚かれました。しかし、世界は先に行っていますし、これくらいのスピード感で、いま変わっていかなければ、日本企業は変わらないのではないかと覚悟を持って進めています。