営業の武勇伝の影には「失注」あり
営業職のミッションは「受注」を獲得すること。受注に関する武勇伝やエピソードが語られる場面は多いですが、当然、そうした成功体験の裏には「失注」の経験もあるわけです。営業職の方々に話を聞くと、失注した事実にショックを受けて「なぜ失注したのか?」を深掘りしていない方も少なくありません。なお、ここで言う「深掘り」とは既存・新規に限らず、失注時にお客様へ失注理由をインタビューすることを指します。
インタビューを行うことのメリットは、同じ理由で失注を繰り返す可能性を低減できること。そして何よりも、そのタイミングではご縁がなかったとしても関係性を継続することにつながります。そうすれば、今後改めて提案の機会をもらうこともでき、中長期的には受注につながる可能性も高まります。
かくいう私も、営業パーソン時代は商談失注後のインタビューを怠っていたひとりです。理由はシンプルで、失注した相手と会うのは気まずく、気が重くなってしまうためです。一度「お断り」をされた顧客に再度顔を合わせるのは恥ずかしく、気まずいものですよね。
失注理由がわからないと、前に進めない
お笑い芸人から営業職にキャリアチェンジをしたばかりのころは、連日商談に挑めど、営業力も専門知識も培われていなかったことから、失注を重ねる日々を過ごしていました。しかし、何度失注を重ねても自分ひとりでは失注し続ける理由がわからず、前に進めない──そこで、いっそお客様に直接その理由を尋ねてみようと思い立ったのが自分の「失注インタビュー」のはじまりです。一例ですが、とある得意先に失注理由を尋ねたところ、次のような返答がありました。
「〇〇という会社の営業が〇〇してくれて、御社の優先順位が下がってしまったんです」
「競合他社が現れて自社の優先順位が下がってしまった」という観点は当時の私からすると目から鱗で、そのときの感情は今でも心に刻まれています。
失注に至る場合には、お客様から何かしらの失注のサインが発せられていることが非常に多いです。至極当たり前ではありますが、ひとつでも多くの成約を勝ち取ることを生業とする営業職としては、お客様から失注のサインを発せられる前に先んじて信頼を獲得し、受注に結び付けたいところです。
とはいえ、お客様の商談先が自社のみ、というケースはそう多くなく、競合企業と比較されながら吟味されているケースが大半です。だからこそ、「失注のサイン」を見極めて先手を打ち、工夫をしながら「攻め」の商談を実践することが受注の獲得において重要になります。