付け焼刃の対策は持続的な成長の邪魔をする
━━現職に至るまでのご経歴をかんたんに教えてください。
TISのテクノロジー・イノベーション本部 インキュベーションセンターに在籍しております、天野善仁と申します。日立コンサルティングを経て、2015年より現職です。私が所属しているTISインキュベーションセンターは、設立当初からオープンイノベーションによる新規事業創出をミッションに掲げる組織で、私はスタートアップ支援や共創に必要な仕組みづくりに注力してまいりました。
単なる支援にとどまらず、「ベンチャー企業とともにビジネスを共創する」ことに重きを置いています。このたびリリースする運びとなった「Sales Drive」は、オープンイノベーションで生まれた事業のひとつです。
━━コロナ禍はアウトソーシング市場や御社のビジネスにどのような変化をもたらしましたか?
営業活動のアウトソーシングに対するニーズは、コロナ禍以前より感じておりましたが、コロナ禍以降はいっそう需要が高まっているように感じます。とくに、インサイドセールスを筆頭に「リモート環境下で活躍する組織を立ち上げたい」という相談を受ける機会が非常に増えました。
我々がターゲットとしている顧客は主に2種類いらっしゃいます。ひとつは、いわゆるシリーズA以降のスタートアップやSMBの企業。そして、もうひとつは新規事業を立ち上げるエンタープライズ企業です。コロナ禍前後の変化という点では、とくに後者が増加している印象です。
かつて、多くの営業組織では「リストを購入し、架電業務をアウトソーシングする」「電話がつながった案件はケアしていく」――いわば、顕在層の刈り取りに重きが置かれていたのではないかと思います。しかし、このフローを繰り返すと、当然リストは枯渇してしまいます。すると、これまで「電話がつながらなかったから」と切り捨てていた潜在層へのアプローチが必要になってくるわけです。
コロナ禍をきっかけに、ビジネスをスケールさせるためには、顕在層だけでなく潜在層のケアにも力を注がなければならない現実を多くの企業が突きつけられたのだと思います。しかし、どのようにして潜在層のケア(ナーチャリング)をすれば良いのかがわからないまま、立ち止まってしまっている企業は非常に多いです。
また、エンタープライズ企業における新規事業立ち上げの現場では、「新規ビジネスを前進させる営業組織の機能をつくりたい」と明確な目的を持って相談に来られるリーダーもいれば、右も左もわからない状態でゼロから相談いただくケースもあります。
事業会社の課題は、大きく「人」「戦略」「ツール」の3つに分けられます。とはいえ、これらはそれぞれが独立した課題として顕在化するケースは少なく、むしろ、組織を悩ませる課題の多くでは、3つの要素が複合的に絡み合っています。しかし、 クライアント企業にヒアリングを行っていくと、「見込み客が枯渇したので、新たにリストを購入する」「営業活動を効率化するツールが必要なので、とりあえずSFAを導入する」など、「人」「戦略」「ツール」に対して個別の対策を打つ企業が依然として多いように感じます。
多くの営業課題は横断的なアプローチをしなければ解決が難しいですし、何より、付け焼刃の対策になりかねないため、組織の持続的成長にもつながりづらいです。BPOサービスはそうした営業組織が成果を高め続けられるよう支援する役割を持っているため、アウトソーシング市場全体の引き合いが増えているのではないかと思います。