SFA活用のカギを握るファーストラインマネージャーのメタスキル
――システムの成否は、常に現場で使われるかどうかにかかっています。ファーストラインマネージャーをどのように説得し、SFAシステムの活用を促していけばよいのでしょうか。
会社によって方法は異なると思いますが、ひとつはシンプルにトップダウンで理解を求める方法がありますよね。目的やメリットの大きさを伝えた上で、組織の一員としての義務であることを理解してもらうわけです。
まずファーストラインマネージャーにとってのメリットは、私もはじめてSFAに触れて感動したように「他の人の営業活動が見えること」です。ある部下がどうしても受注ができない、ファーストラインマネージャーとして指導しなければならないけれど、どうしたらいいかわからないという時にも、自分の営業方法だけでなく、他の営業担当者のやり方を参考にできます。マネージャー同士が情報共有して、改善案としてのサンプルが豊富に揃うわけです。
また、セカンドラインマネージャーは、ほぼリアルタイムで各チームの動向が把握できることになります。そうすれば比較もしやすくなり全体の傾向も見えるので、ファーストラインマネージャーへのフィードバックも容易かつタイムリーになります。それは当然ながらファーストラインマネージャーにとっては的確なフィードバックをもらえるわけですから、大きなメリットになります。その繰り返しにより、より強いチーム、組織になっていきます。

――それぞれのマネージャーが効果的なフィードバックができるようになれば望ましいですね。
私はそうしたスキルを使いこなすスキルである「メタスキル」が重要な鍵になると考えています。メタスキルをわかりやすく説明すると、世の中にはいろいろなコミュニケーションツールがあり、まずはその操作方法など道具を使いこなすスキルが必要で、さらにそうした道具を、どのタイミングでどのような関係性の人にどうのような内容で使うかによってコミュニケーションの結果は大きく変わりますよね。この「スキルを使いこなすスキル」こそ「メタスキル」というわけです。「SFA営業術」と言い換えてもいいでしょう。
SFAでも、第1段階のスキルであるデータ入力やグラフ化などは1〜3日で使えるようになります。しかし、それだけではSFAを使いこなしていることにはなりません。入力されたデータをもとに「どういう順番でお客様と会っているのか」を分析し、アドバイスができ、行動に移せるとしたら、SFAのメタスキルが身についたといえるでしょう。これは逆のパターンもあります。手帳と電話でタイムリーにいいアドバイスができるマネージャーが既にいたら、ITのスキルが投入されればコミュニケーションの密度や頻度が上がり、より多くの成果を上げることができるようになるでしょう。
コミュニケーションのスピードが変わるし、集計スピードが変わる。フィードバックも速くなるし、その実感はけっこうリアルに感じられますよ。ちなみに、セールスフォース・ドットコムの営業はとにかくSalesforce上で「検索」を使っているようなんです。セミナー参加者のリストや競合情報、受注した時の提案書など社外にはないノウハウや情報などが得られるとわかっているんですね。共有された情報によって営業個人も成長し、組織として戦うことが可能な環境だと思います。