SFA導入を成功させるための3つのポイントとは?
――営業の社内外の仕事、そしてプロセス全体を支援するとなると、システムに期待される範囲は本当に広いものになりますね。
そうですね。特にCRMとSFAは境界があいまいに表現されることも多いですね。ちゃんと整理するなら「CRMという大きなカテゴリの中にSFAとMA(マーケティングオートメーション)とCSS(カスタマーサービス&サポート)がある」と理解しています。CRMは非常に範囲が広く「顧客接点」すべてに関わってきます。直接会うのは営業、SNSなどではマーケター、問い合わせの電話がかかってきたらカスタマーサポート。それ以外にも代理店や製品(IoT)などの接点もありますから、SFAだけを導入しても最適な顧客接点の管理は難しいでしょう。MAやCSSも含めてトータルにシステムをつくる必要があります。あらゆる顧客接点に対応してこそのCRMですから。
――そうなると実際にSFAも含め、システムを導入する上で、どのようなことに注意したらよいのでしょうか。
大きなポイントとしては3つあります。まずひとつめは「ITシステムを購入する」と考えないことです。目的は「仕組みを変える」ことであり、ITシステムの導入ではありません。営業の仕組みを変えるということはITシステムだけでなく、フォーメーションや役割、情報の流通パターンなども含めてトータルの「システム」の変革になります。サッカーでも4-4-2から3-5-2へシステムが変われば、攻め方も守り方も変わります。導入時のトレーニングもITの操作説明だけでなく、改革の目的や指標の判断基準と改善アクションなど、使いこなしかたの面でも実施する必要があります。
ふたつめのポイントとしては、プロジェクトの主導者がIT部門ではなく、営業部門であることです。当然ながら、このようなフロント系のITシステムはデータを入れなければ意味がなく、その大切なデータを知っていて、持っているのが現場です。現場を主役とするようなプロジェクトであるべきでしょう。ただし日々案件に追われて忙しい営業部門だとプロジェクトがなかなか進まないこともあります。営業について熟知しながらも俯瞰的に見られる人や部署が適役でしょう。具体的には、営業企画や経営企画といった部署が音頭取りするとスムーズです。もちろんIT部門主導でも成功した例はありますが、営業を知っている方がいた方が、現場の声の取捨選択の判断はしやすいのではないかと思います。

そして3つめが「ルールを決める」ということです。具体的に言うと入力のタイミング、案件名の付け方、会議でのデータの使用方法、企業名の略称の使用などのことです。意外なのですが、実は共有すべき情報整理にルールがないところが多いのです。情報を活用するには検索・分析のためにデータの整っていることが必要です。しかし、「ファイルサーバーで提案書を共有しよう」と導入したものの、フォルダやファイル名が顧客になったり、日付になっていたりとバラバラでは共有どころではありません。「なかなかルールを守ってもらえなくて」というところがあるかもしれませんが、経費精算もルールを守って出さなければ、お金は戻ってこないでしょう。まして企業業績の浮き沈みを決める「ビジネスを創り出す」ためのシステムです。ルールを守らないときの遺失利益はいかほどでしょう。もったいないと思いませんか。
――確かに売上があってこその会社ですからね。では、導入してからの障壁についてはいかがでしょうか。システムが上手く利用できない理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
今申し上げた3点をしっかりやっている会社はそう大きな障壁に当たることはないと思います。そもそもあまり障壁を心配しすぎるのは良くないでしょう。初めてのシステム導入では多少のトラブルは当然あります。「SFAの導入プロジェクトが10回目」というベテランは社内にはそうそういませんから。現場と調整しながら徐々に浸透させていく努力は必要だと思います。ただそこで真摯に向き合わないとシステムはちゃんと機能しないままでしょうね。
システムを浸透させていくカギを握るのが、主任や課長といったファーストラインマネージャーです。数名の営業担当者を束ねて指導し、時には営業同行することもあり、チームの売上予測を上司に報告するなど、案件の成否に深く関わっているポジションです。ファーストラインマネージャーの動き方、考え方を変えなければ、営業改革はできません。もちろん、部長などにあたるセカンドラインマネージャーは、ファーストラインマネージャーがシステムのルールに則って動くことができているかどうかマネジメントする必要があります。