10年後に業績会議ゼロを目指しSFA再構築をスタート
――あらためてSFUG CUP 2021の優勝おめでとうございます。SFAの再構築を担うまでの秦さんのキャリアについてうかがえますか。
日立ソリューションズは、日立グループのITセクターの中核を担っており、いまの言葉で言えば、「DX」に50年以上取り組んでいます。私は、何千人もいるシステムエンジニア(SE)のひとりとして入社し、主に金融業界のお客様を担当してきました。プロジェクトマネージャーやお客様のCIO補佐までを担当したのち、経営企画部門に異動して、コーポレートブランドの確立や日立ソリューションズグループの再編などをとりまとめました。
2016年4月の営業企画部門への異動後はまず1年間、営業情報の分析や戦略立案を行ったのですが、営業部門の実力値を把握するためにはビジネス活動状況をリアルタイムに可視化する必要があると考え、2017年からSFAの再構築と活用定着に取り組み始めました。SEとして仕事をしていたころから、「もっとこんな会社になると良いな」という思いを持っており、「事業部門、スタッフ部門、営業部門、すべてを経験した自分だからこそできることをやろう」という思いでスタートしました。
――抜本的な改革に取り組むにあたって、SFAを中心に据えた理由はありますか。
営業情報の分析を経て、「ひとりあたり売上高」が頭打ちになっていることがわかりました。それをどう改善するかを考えたかったのですが、残されているデータは「結果」だけで、「営業活動状況 」は可視化されていなかったのです。担当者の頭の中や各部署には情報があったようですが、全体を比較できなければ、どこに投資すべきか、どこにメスを入れるべきか、戦略を立てることができません。そこでビジネス活動の可視化に最適なSFAを選び、当時ほとんど使われていなかったSFAの再構築と定着化に着手しました。
――具体的には、どのような目標を掲げてスタートされたのでしょうか。
まずは、「10年後に社内の業績会議と専用の資料作成をすべて廃止する」という大きな目標を掲げました。もちろん、当社は5,000人、グループでは1万人を超える規模で、急に業務プロセスを変えることは難しいです。それでも不可能だと割り切ると諦めになりますから、思いをバーンと掲げたわけです。
たとえば、業績管理でよくある「商談ごとにA、B、C、Dなどを設定する“ヨミ”」。当社では、営業統括本部の業績会議の前に、本部内会議、部内会議、課内会議、ユニット内会議といった会議があり、それぞれの会議用に大量の資料づくりが発生していました。主任がBで提出して、慎重な課長がCに書き換えるが、部長はAでいけるだろう! とひっくり返す……というのも“あるある”ではないでしょうか。このような社内工数は、組織全体の生産性の低下につながります。SFAに入力したリアルタイムの情報を用いれば、AやBなどのアルファベットを付ける必要もなく、どの会議でも事前の資料作成は不要となりますよね。会議では、もっとも重要な「戦略」を中心に議論してもらおうと考えたんです。
――実際に、現在まででどれくらいの削減が実現できたのでしょう。
営業統括本部全体で、SFAとBIによるリアルタイムデータによる会議化を推進し、事前に作成する資料の多くを削減することができました。なお私の部では、資料を作成しないだけでなく、4年めにして業績会議自体をゼロにし、SFAとBIだけでの組織運営を実現しています。