要件が明確であれば、商談チャンスを獲得しやすい時代
ギグセールスで取締役を務めております、福山敦士と申します。私は2011年に新卒でサイバーエージェントに入社し、グループ会社CA Beatの立ち上げ、シロクの取締役営業本部長を経験したのち、27歳で独立・起業しました。事業を立ち上げ3度のM&Aを実行後、ショーケースへのM&A時に同社の取締役人事本部長に就任します。その後はPMI、組織改革、採用育成、人事制度再設計、企業買収、新規事業開発などに従事したのちにギグセールスの取締役に就任し、現在に至ります。
本連載を通して、非対面での営業活動で大きな力を発揮する「コンテンツセールス」の有用性をご紹介できますと幸いです。
そもそも「コンテンツセールス」とは何か――ひと言で言うと「個人が実践するコンテンツマーケティング」です。
そもそも「コンテンツマーケティング」とは何か。それは、潜在顧客を顕在顧客化するために情報提供を通して関係性を構築し、顧客開拓を実現するための一連のマーケティング手法を指します。顧客にとって有益な情報(コンテンツ)を提供することで、見込み客を獲得・育成し、成約につなげることができます。これを企業ではなく、個人の営業パーソン単位で行うことが、「コンテンツセールス」の考え方です。
コンテンツマーケティングとの違いは「プッシュ型でコンテンツを提供できる」点にあります。つまりリード獲得にだけコンテンツを活用するのではなく、顧客のフェーズごと――たとえば初回アポ、稟議のタイミングなど――にデジタルコンテンツ(事例集、ホワイトペーパー、動画など)を提供することで再現性があるセールスを不要な工数を削減して進められるのが利点です。
従来の営業活動では、明確な要件がないままアポイントに赴いたとしてもディスカッションを重ねていく中で提案内容が定まったり、紹介の案件をいただいたりするなど、「偶発的な出会い」が散りばめられていました。
そんな中、オンライン商談が普及したことにより、「アジェンダを事前にお知らせいただけますでしょうか」という言葉をかけられる機会が増えました。これまで以上に商談前の「事前準備」を求められるようになり、要件が不明瞭なアポイントを取りづらい時代になってしまったのです。
しかし、これによって生じたのはデメリットだけではありません。純粋なプッシュ型でのアポイント創出は難しくなってしまいましたが、「理由があれば商談のチャンスを獲得しやすい」時代になったともとらえられるでしょう。お客様は「偶発的な出会い」の機会が減少した分、「情報収集」に対する意識が高まっています。実際に、私の周りでもコロナ禍以降はアウトバウンドコールでのヒアリングがしやすくなったという声を耳にします。
従来の対面コミュニケーションは、一定の時間を確保し、耳で聞いた情報を頭で咀嚼・要約して、自らの口を使って言葉で第三者に伝えるものでした。しかし、現在はLPや動画のURLが容易に共有できるようになったほか、資料やメッセージをキャプチャですぐに送信することができるようになっています。
このように、時間効率が高まったことで「とりあえず話しましょう」という商談はアポイントが取りづらくなる一方、事前情報としてのコンテンツを有することで商談獲得率が劇的に向上したのです。当社では、アウトバウンドコールにおけるコールアポ率は、コンテンツ提供の有無によって最大10%近くも差が出ています。